第5話「ファンと不安」
「それで、全部をバラしちゃったの?」
「バラしたと言うか、バレちゃったって感じだけどね」
次の日、俺は大学で委員長に昨日の出来事を相談していた。
「でも、安藤くんがラノベ作家って誤解されたのなら別にそのままでも良かったじゃないの?」
「俺も最初はそう思ったんだけどね……」
『ええええええ!? 朝倉先輩ってラノベ作家だったんですか!?』
『そうよ! 私がこの作品の作者なのよ!』
あの後、結局朝倉さんは自分からラノベ作家というのをバラしてしまったのだ。
「でも、何で朝倉さんは自分でバラしちゃったの? 別に、安藤くんが間違えられたのならそのままにしたって良かったんじゃないの?」
「後で理由を聞いたら、俺がモテるのが嫌だったみたい」
聞いた時に若干拗ねていたので、実に朝倉さんらしい理由だった。
「フフ、嫉妬ね」
「そうか? 別に浮気なんてしないけどな」
それほど、俺って朝倉さんに信頼が無いのかな?
「でも、安藤くんってわたしと付き合っていた前科があるでしょう?」
「うっ! そ、それは……」
確かに、委員長と昔付き合っていたのは事実だけど……
しかし、今何を言っても過去は変わらない。
だから、ここは甘んじて受け入れるとしよう。
「安藤くんも大変ね。クフフ♪」
しかし、こいつは本当に悪役みたいな笑い方をする女だな。
「でも、良かったの?」
「良かったって何が?」
「紫吹さんだっけ? 彼女に話しちゃったんでしょう? 確か朝倉さんはラノベ作家なのは大学では秘密にしているんでしょう?」
「うーん、そうなんだけど……」
まぁ、問題は無いだろう。
だって、紫吹さんは失礼かもしれないが俺と同じ『ぼっち』だし、誰かに話すような相手なんていないはず――
「ねぇ、安藤くん。ちょっと……」
「……ん?」
そう言われて、委員長の差し出したスマホの画面を見るとそこには一つのSNSアカウントの投稿が映っていた。
『大学の先輩が、大好きなラノベの作者様でビックリしました!』
そのSNSの投稿には一緒に自分のラノベを持って微笑む俺の彼女の写真がアップされていた。
「これって、朝倉さんのことよね?」
「な、な……」
何してるんだお前ぇええええええええええええ―
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