第3話「朝倉さん」
朝、目を覚ますと、黒髪ロングの美少女が俺の顔を眺めながらニッコリと笑った。
「安藤くん、おはよう♪」
「朝倉さん……おはよう」
朝倉さんは俺の彼女だ。高校生の時から付き合って大学生になった今では同じアパートで暮らしている。
「安藤くん、今日は大学の講義は二限からだったわよね? もうそろそろ行かないと遅刻しちゃうわよ?」
「もうそんな時間か……朝倉さん、起こしてくれてありがとう」
「いいわよ。だって、同棲する時に『お互いに助け合おう』って約束したじゃない♪」
「うん、そうだったね」
「安藤くん、まだ起きてばかりで目が覚めてないでしょう? コーヒーいる?」
「朝倉さん、ありがとう。もらうよ」
朝倉さんと同棲して一年になるけど、生活力の無い俺は朝倉さんに助けられてばっかりだな。
「そう言えば、朝倉さんは今日、大学の講義はあるの?」
「え、ああ、講義ね? 確か……私は五限からだったかしら……」
「そうなんだ、じゃあ、まだ余裕はあるね」
「ええ、そうなの! 余裕はあるのよ!」
俺達は同じ大学だが、ちょっとした手違いで別々の学部に入学している。
なので、俺と朝倉さんが受ける大学の講義は殆どが違う。
でも、朝倉さんは高校の時から優等生なので、たぶん俺が心配しなくても大丈夫だろう。
「朝倉さん、そういえば『レベル99のひとりごと』のアニメ見たよ! めっちゃ面白いね」
「でしょう! 安藤くんなら絶対にあの作品の面白さを分かってくれると思ってたいたのよ! あれは原作のラノベも面白いの! 良かったら、本棚に原作もあるからオススメよ!」
「本当! じゃあ、大学が終わったら読んでみようかな」
そして、俺達はお互いにラノベ好きだ。
俺はただのラノベオタクだけど、朝倉さんは俺よりも熱心なラノベ好きで特にウェブ小説などは彼女の方が詳しいのでこうしてお互いに好きになラノベを共有しているのだ。
「そうだ、朝倉さん」
「安藤くん、何かしら?」
だけど、俺と彼女には同じラノベ好きでも決定的に違うことがある。
「ぼっち・ざ・すてっぷの締め切りは大丈夫そう?」
「―っ!?」
瞬間、朝倉さんの目が滅茶苦茶に泳ぎ出した。
「も、もも、もちろんヨ!? 安藤くんってば急に何を聞くのかしら? 私はいままままでもいくつもの締め切りをたたた倒して来たんだからね!?」
「うん……朝倉さん。動揺しすぎて『ま』と『た』がすごく多いよ?」
あ……これは駄目なやつだな。
「それで、朝倉さん。大学の五限に間に合うには何時に家を出なきゃいけないんだっけ?」
「15時にはここを出ないといけないわね……」
今はまだお昼にもなっていない。時間は十分にあるだろう。
しかし、朝倉さんの身体は震えていた。
「朝倉さん、原稿はどう?」
「お、終わってないわ……」
朝倉さんの体の震えが増した。
確か、今日が締め切りだとか言っていた気がする。
「それで、締め切りは何時だったっけ?」
「6時……」
「夜?」
「朝の……」
もう過ぎているじゃねぇーか……
「朝倉さん、原稿終わりそう?」
「終わらないのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
朝倉さんはラノベ作家です。
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