尻に恋して

アキノナツ

良い尻だ


魅惑のお尻。

あのお尻に顔を埋めグリグリしたい。

くんかくんかと匂いを肺いっぱい、腹一杯に吸い込みたい。


ああ、なんて魅力的なんだ。


「お前、真顔過ぎて怖い」


カフェテラスで、アイスティーのグラスを片手にストローを咥え、チューっと喉に流し込みながら、視線は釘付けで、目が対象の動きに合わせて動く。


前の席に座ってる友人にいつものセリフを言われる。言われたところで何も変わらないのだが。


「お前、アイツ好きなの? 告れば? 男だけど」

手を添えて小声で囁いてくる。


この時間いつも通る。講義室へ向かうのにここしか通る道はなく、いい具合にカフェテラスがあるんだから、ここに陣取って愛でる日々。


「アホか。変態だと思われるじゃないか」

視線を離さず、言い返す。

今日は立ち話を始めた。尻がこっちを向いてるのがまたいい!


「十分変態だと思うが」

「誰が」

「お前が」

「まさか」

「紛うことなき」

「マジで?」

行ってしまった尻を見送りながら、目の前の男を見る。


「マジで。お前さ、顔がイイだけに、とっても残念。女の尻はダメなのか?」

「あの尻じゃないと嫌だ」

「そう…。やっぱ変態だよ」


ジュッと最後の水っぽいアイスティーを飲み干した。


目の前の友人は、中学からの腐れ縁で大学まで一緒だ。

エロ本AVもエロい事は、二人で共有してきたので、互いの性癖もツーカーだ。

初めの頃は欲望のままに一人ではない心強さにエグいところまで突き進んだ。

黒歴史に近いものがある。

共有してるので、互いにやっちまったなと互いを慰めてる同志だ。


空になったグラスをトンとテーブルに置く。

甘ったるいフルーツミックスジュースなぞをチューチュー飲んでやがる。


「あの「それ以上ココで言うなよ」

遮られた。

グラスを下げにウェイターがやってきていた。

そう言えば、この男の尻もきゅっと上がってて制服の黒のスラックス越しにいい形を晒してくれている。しかし、私が出会ったあの尻には見劣りする。


去っていく尻を見送る。

ため息が出る。

「あんまり見んな」忠告が入る。


「どうしよう。変態になりそうだ」

「十分変態だから心配するな」

「そうか。良かった」

「良かないが、これからずっとコレ?」

「そうだなぁ。講義室は座ってて、潰れてるのしか見れないんだよな」


「真面目に講義受けろよ」

「そっちも大丈夫だ」

「イケメンが真顔で尻見てるって、お前狙ってる女どもが知ったらどうなるんだろうな」


ジュースを飲み干し、時計を確認している。

「行こうか」

友人が荷物を担ぐ。

「ああ」

潰れた尻が待っている。

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