俺の弁当を狙ってくる学校1可愛い立花さん
かりわ
第1話 学校1かわいい立花さん
俺が料理に目覚めたのは小学校5年の頃だった気がする
きっかけは泣いてばっかだった妹に元気を出してもらうためだった
親父は単身赴任で海外、母親は新聞記者の仕事で忙しかったから基本家には
4歳の妹と2人きりだった
そりゃあ4歳なんて1番親に甘えたい時期なんだから寂しいのは当然だろう
流行りのゲームをさせても、一緒に絵を描いても全然興味を示さなくて
困り果てた俺が最後に行き着いたのが料理だった
「これすっごいおいしい!!!」
ついさっきまでしゃくりあげて泣いていた妹が俺の握ったおにぎりを食べた瞬間
全開の笑顔を浮かべむしゃむしゃと食べ出す
いつも悲しい表情だったあいつの笑顔
あの時俺は自分の料理で誰かを元気づける楽しさを知ったんだ
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ただいまの季節は4月
卒業シーズンだった3月が終わり、あたりの桜は満開で人々の新たな出会いを見守っている
そしてこの俺、
「..そろそろか いや あと少し.. 」
鍋の中に入っている大量の油 さらにその中には金色に光っている肉の塊
とんかつは油から掬いだすタイミングが命..
自分で食べるからって決して手は抜かない
料理人において油から救出するこの瞬間は一発勝負
失敗は許されないという緊張が辺りに走る
「...今だ!!!」
来た これぞベストタイミング!
衣がきらりと輝いたその瞬間!! 箸ですらりと掴む
「最高だ..」
我ながら素晴らしい出来だ
ここ数年でも1番上手にできた気がする
「やっぱり脂身がつかない様に最初にお湯でさらしたのが正解だったな」
上機嫌なまま胸ポケットからメモ帳を取り出しすらすらと書いていく
上手に出来た だがしかしまだまだ上を目指せるはず
'''成功も失敗も全てメモして振り返る'''
昔ばあちゃんに教えてもらった心得だ
そうしている間に時刻はa.m.6時30分
俺がこうやって朝起きてご飯を作る様になったのは中学生から
飽き性な俺だが珍しく、17歳の今まで4年間ほぼ毎日続けている
料理を始めたのは小学5年だから実際は6年目だ
『毎日やっていて飽きないのか?』ってよく聞かれるけども全くといって飽きない。むしろ毎日毎日その面白さに引き込まれている
揚げたとんかつを5分を程網の上に置いて油を落としている間に
家族の朝ごはんを用意する
うちの家族は朝はあっさりと食べるタイプだから食パンを3枚トースターに入れ
フライパンの上に油を敷く
ドタドタ
2回から足音が聞こえる
気になって時計を見ると7時
そんなこんなしている間に母と妹が起きてくる時間になっている
少し焦りながら机の上に皿を並べる
料理をしていると時間が一瞬で溶けてしまう
楽しすぎるのも罪なもんだ
ガチャ 「お兄ちゃんおはよー!!」
「おはよう つばめ! ちょっと皿運ぶの手伝ってくれない?」
夢中で作っていると妹の鷹藤つばめが入ってくる
泣き虫だった昔とは違い今では体操で全国大会にも出場するほど成長した
「立派になったな...」
「またお兄ちゃんが変なこと言ってるー」
「変なお兄ちゃんで悪かったな ってか母さんは?」
「さっき顔洗ってたからもうちょっとで降りてくるんじゃない?
それよりもさ!!昨日投稿した動画どうだったの!?」
「はいはい ちょっと待てよ」
ポケットからスマホを取り出し人気動画投稿アプリのマイチューブを開く
「えっと.. おお!! 昨夜投稿した''肉巻きみたらし団子’’の動画もう5万回も
再生されてるぞ!! ほら」
スマホをつばめに渡すと目をキラキラさせ飛び跳ねながら喜ぶ
「すごーい!! 大人気じゃん!!」
「こんなに多くの人に見てもらえるなんてな..
でもつばめ? この事は学校で話すんじゃないぞ
ばれるとめんどくさいからな」
「えー!? いいじゃん 」
「ダメなものはダメだ ほら朝ごはん早く食べないと学校間に合わなくなるぞ」
残念がるつばめをなだめながら椅子に座らせる
さっきから俺たちが話している''動画''のことだが実は俺は1年前からマイチューブに「たかたかクッキング」というチャンネルで動画を投稿しているのだ
元々は妹を喜ばせたくて作ってた料理だが高校に入学すると同時に多くの人にオリジナル料理を紹介したくてチャンネルを開設してみた
最初は全然再生されなかったけど毎日投稿の努力が報われたのか今ではそこそこ多くの人に見てもらっている
そうしてつばめと色々話しながら朝食を机に並べているとガチャとドアの開く音がした
「おはよー 大地、つばめ」
「おはよ 母さん ほら早く食べよう」
「ありがとう いただきまーす」
三人で手を合わせ、朝食を食べ始める 時刻は7時20分
「ちょっとのんびりし過ぎたわ 急がないと」
俺の通っている高校は家から離れている為早く電車に乗らないと間に合わないから急いで食べる
「遅れないようにね てかあんた2年になったけどクラスに可愛い子とかいないの?」
「!? いきなりなんだよ!」
母の突然の発言に飲んでいたコーヒーを思わず吹き出してしまう
「お兄ちゃんさ好きな子とかいないの?料理できるってけっこーモテそうだけど」
「つばめまで.. あのな恋愛っていうのはそんな簡単じゃないんだよ
って母さんもそんな事聞くなよ!」
「ごめんごめんちょっと気になっちゃってさ
彼女さんが出来たら紹介してねー 」
「はいはい ご馳走様 母さん洗い物よろしくね」
早くこの話題から逃げるべく速攻で食べ終え、部屋へ駆けこむ
制服に着替え 今朝作った弁当と昨日の動画で作った料理を詰めたタッパーをカバンに入れ家を入れて家を出る
「行ってきまーす」
最寄り駅のホームで学校に向かう電車を待ちながら今朝の母さんとの会話を思い出してしまう
(彼女か....)
ちなみに俺は現在まで彼女がいた事がない
中学までは料理一筋だったから恋愛なんて考えた事も無かった
だが今俺は高校2年生 自然と彼女の1人欲しいとも思う時期だ
周りの友達も段々と彼女が出来始めている事に焦りを感じる
いつの間にこんな差がついてしまったんだ まったく
(新しいクラス、可愛い人多かったな..)
そう 俺のクラス2-Bは他のクラスに比べて女子のレベルが高いのだ
特にその中でも1番可愛いと言われているのは
容姿端麗、成績優秀 だけど少し抜けてて授業中は気持ちよさそうに寝ている
そこもまた人気の一つだ
「俺も立花さんみたいな子と付き合いたいなー」
「まーた 大地が変なこといってら」
「!? 智紀!? いつからそこに?」
「お前がぼーっとしてるから気づいてなかったかもしれねぇけど
もう○○駅だぞ? ってか電車の中だからもっと小さい声で喋れよ..」
いきなりの事に思わず大きい声を出してたようで周りの視線が気になる
今声をかけてきたのは
俺が気を許して話せる友達の1人だ
こいつも俺と同じ電車通学なので毎朝この○○駅で合流する
「あのさ智紀」
「ん?どした」
「俺今日立花さんと喋ってみようと思う」
俺の言葉聞いた智紀は呆れたような顔になる
「立花さんっていったらかなりガードが硬い事で有名だぜ?
1年生の頃なんか先輩、同級生関係なく告白してきた人を
断りまくったらしいしな」
「べ、別に告白しようってわけじゃないさ!
ただ仲良くなりたいだけだし!!」
「でもお前さっき''立花さんみたいな人と付き合えたらなぁ''って
呟いてたじゃん」
こいつ..やっぱ聞いてたのかよ
「ぐぐぐ... そーだよ!! 本当は彼女になって欲しいさ!」
「やっぱそうじゃんか だったら自分からアタックするしか無いぜ?
あっちから来てくれるなんて思ってたらいつまで経っても出来ないからな」
こいつがやけに上から目線で喋るのはイライラするがそれも仕方ない
なぜならこいつは既に彼女持ち__あっち側の人間だからだ
「だから今日声かけてみようとしてんの! でもどんな話題を出したら良いか
分かんなくてさ」
「それならお前、料理があるじゃん てか昨日の動画すごく面白かったぞ」
「そ、それはどうも.. でも料理なんて女子高生が食いつくような
話題じゃ無いと思うんだけどなー」
ちなみに智紀は俺が動画投稿をしているのを知っている数少ない人物だ
「まぁ大丈夫さ なんかあったらコーラ一本で助けてやるからさ!
ほらほらもう学校だぞ」
話をしている間に学校の最寄駅に着いたようだ
(はぁ.. 結局何を話すのかまだ決まって無いしな)
まだ教室に向かって廊下を歩いている最中だが緊張してしまう
胃が痛い..
「ほらついたぞ ガラガラ」
智紀がドアを開け俺もその後に続く
「おはよー みんな」
「おはよ竹下君、委員長!」
クラスの女子達は俺のことを委員長と呼んでくる
まぁ1年の頃からずっとクラス委員長をやらされているからだろう
『2年生こそはなってたまるか!』と意気込んでいたものの
まさか今年もじゃんけんに負け、委員長になるとは..
とんだ不運だ
そんなことよりも1番前の窓側の席 そこですうすうと
居眠りをしているのがクラス1の美少女__立花香澄さんだ
(やっぱ 可愛い)
綺麗な銀色の髪 まるでお伽話に出てくるかの様な可憐な雰囲気を纏っている
喋りかけるのすら億劫になる程だ これは今日はダメそうだ
そうして俺が1番後ろの自分の席にカバンを置き智紀達__俺も所属する男子グループの机に集まる
「やっぱ立花さん可愛すぎるよな この前読モのスカウト受けたらしいぞ」
「マジ? 他のクラスのやつもみんな様子見に来てるくらいだしやっぱすごいんだな」
「大地、お前立花さん狙ってるんだろ? 大丈夫なのか ういうい」
「何でみんな知ってんだよ! まさか智紀.. バラしやがったな!」
「俺じゃねぇよ! お前昨日の始業式から立花さんの事ジロジロ見てたじゃねぇかバレバレだよ」
「俺そんなにジロジロ見てたのか?くそ!恥ずかしい..」
どうやら無意識に目が釘付けになってたらしい
立花さんにバレてなきゃ良いけど
「てか 熱気遅くね? あいついつもならこの時間には来てるだろ」
熱気というのは俺たちのクラスの体育委員長を任されている
その名の通り暑苦しくてうるさいが良いやつだ
「ってあれ 熱気じゃねぇか? あの廊下で女子と手を繋いでいる..」
俺たちは一斉に廊下の方をじっと見る そこには頬を赤らめながら手を繋いでいる夏生がいた
「あぁ じゃあまた あとで うん ありがとう..」
そこにいた夏生はいつもの馬鹿でかい声で走り回っているような感じではなく
恥ずかしそうに彼女との別れを惜しむ 付き合いたての感じだった
ガラガラ
「やあみんな!!!おはよう!!今日もいい天気だな!!
こんな日はグラウンドを何百周もしてしまいたくなるな!
ハハハハハ!!」
さっきまでの雰囲気はどこに行ったんだと疑いたくなる様な大声で教室に入ってくる
「おい夏生! さっきまで一緒にいた女子は何なんだよ!もしや彼女か? 彼女なのか!?」
「おいおい 落ち着けよ大地 今のお前、夏生よりもでかい声出てるぞ?」
「何だよ智紀! お前には俺たち彼女なしの気持ちがわからねぇんだ!」
周りもそうだ!そうだ!と声をあげる
あっち側の人間が今の俺たちに何をいっても止まらない
「さっきまで一緒にいた女子って.. もしや鷹藤君! 見てたのか?」
「見てたも何も 見え見えだぜ! 見せつけてるんじゃ無いかと思うほどな!」
「そ、そうか えっと.. あぁさっきまで一緒にいたのは彼女だ
1年の終わりの春休みに入る前に告白されてな..2年生から一緒に登校する事になったんだ」
彼女の話になった瞬間方を赤らめ出す夏生これは完全にあっち側の顔だ
「そ、そんな まさか夏生にまで.. くぅ 大事にしてやれよ..」
あの''学年1うるさいやつ''と言われていたあいつにも彼女ができるなんて..
「やっぱり羨ましい!! 俺も彼女欲しいなー!」
「きっと大丈夫だ! 優しい鷹藤君の事ならきっと素敵な人に出会えるはずだ!
この熱気夏生が保証する!!」
今のこいつに言われると嫌味にしか聞こえないが純粋な夏生のことだ
きっと俺のことを心配してくれてるんだろう
「ありがとな..俺も頑張ってみるわ」
ガラガラ「みんな席につけー ホームルームを始めるぞー」
バカ話をしていると時刻は8時45分__担任の浅谷が教室に入ってくる
「もうそんな時間かよ じゃあみんなまた後で!」
そう言って俺たちは席に着く
「起立! 気をつけ! 礼!」
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「えっとー今日は3限目から...」
俺は担任の話なんか聞く気も無く、ついつい立花さんの方を見てしまう
(窓の外をじっと見つめている... あの木の上の鳥が気になるのかなもしかして動物が好きだったりして..でも俺犬とか怖くて近づけないし...)
「....であって って鷹藤お前先生の言ってる事聞いてるのか?」
「は、はい! えっと鳥が!」
「鳥? やっぱりぼーっとしてたんだな!」
「えっと.. すみません!」
いきなり先生に声をかけられてパニックになってしまい意味のわからないことを言ってしまった
(くそぉー 浅谷のやつ..)
周りからは笑い声がする
(立花さんは..笑ってくれているかな..)
ちらっと彼女の方を見ると少しだが微笑んでいる
智紀達に笑われたのは恥ずかしいけど立花さんが笑ってくれるのならまぁ良いかという気になる
キンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコン
「じゃあこれでホームルームは終わり! 起立!」
こうしてホームルームが終わり、クラスメイトはそれぞれで集まる
「はぁ やっと終わったぜ それにしても浅谷のやつ話長いよな」
「そういうお前も今日もぼーっとしてたな」
「あ、あれはさ! 仕方ないじゃんか!」
そう言ってまたみんな笑い出す
「そんな事より.. 他のクラスのやつみんなうちのクラス覗き込んで来てんぜ」
クラスのドアは半透明で外からでも中の様子が見える
クラスのドアの前には数々の生徒..特に男子が立花さんの方を見ている
「いくら可愛いからってまるで動物園の様に見にくるのは失礼だよな!
ってか立花さんいつも三人で喋っているよな」
「あぁ多分クラスの女子達も声をかけにくいんだろう」
立花さんの席__その周りにいるのは同じクラスの夢美さんと奏さんだ
そしてもう1人は
彼女は茶道部に所属している
一言でいうならおしとやかという感じの少女だ
その上英語も喋れるという優等生だ
「確かにあんな美少女が一箇所に集まってたら
注目の的にもなるよな」
(うーん 立花さん一見楽しそうに喋ってるけど
なんか笑顔が少し寂しそうというか..)
彼女の笑顔を見ていると昔のつばめを思い出してしまう
あの少し引き攣った感じ、今でも鮮明に覚えている
「やっぱりお前 立花さんに釘付けだな
あんまり見すぎると嫌われちまうぞ」
「なに! そ、そんな! まだ喋っても無いのに! 嫌われるのは嫌だ!」
冗談だよとクラスのやつは言うが今の俺には
刺激の強すぎる嘘だ
「まぁ そんだけあの人が魅力的って事だな
てか次移動教室じゃね? ほら行くぞ」
「あぁそうだな」
そうして俺たちは教室から出ていく
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キーンコーンカーンコーン カーンコーン
時刻は午後1時 長かった授業が一区切りし昼休みに入る
教室と廊下には生徒達の騒ぐ声が響き渡っている
「あー疲れた やっと飯が食えるぜ」
「大地おまえ寝てただけじゃんか」
「いーんだよ 寝てても単位は取れるんだ それよりもみんな
教室で食べるのか?」
「いや俺たちは学食で食べるよ 今日弁当忘れちゃったし」
「そーなのか でも今日作ってきちゃったしな
智紀と夏生はどうするんだ?」
「俺も弁当あるし教室で食べようかな」
「もちろん‼︎ 僕も弁当だぞ!!
熱気家の弁当は具沢山栄養豊富なのだ!!」
「そうか じゃあまた後でな」
そう言って一旦男子グループで教室と学食に別れる
「今日は智紀の席で食うか」
俺と夏生は智紀の席を囲む様にして弁当を広げる
(あの三人も教室で食べるのか..)
どうやら教室で食べるのは俺たちだけじゃ無くあの美少女三人組も弁当を広げている
(それに近い!)
智紀の席は奏さんの席と近い そしてあの三人は奏さんの席を囲む様にして集まっているため自然と近くなる
「!! むむ 鷹藤君の弁当のとんかつ光り輝いている様に見えるぞ!!
美味しそうだ!!」
「あぁ今朝揚げたばかりだからな それに今までと少し作り方を
変えてみたら大成功したんだ」
「やっぱりお前料理のセンスは抜群だな というか大地..
お前今日も''あれ''持ってきてるな?」
「へいへい お前達が食べるかなと思って残ったやつ持ってきましたよ!」
「''あれ''だな!! 僕も昨日見てから食べたかったんだ!!」
そう言って俺は弁当箱からタッパーを取り出してみんなの前に置く
二人が''あれ''というものそれは...
「昨日作った肉まきみたらし団子だぞー」
「 「おお!!」 」
2人とも大喜びでタッパーを開ける
俺は「たかたかチャンネル」で作った料理を次の日学校に持ってきて
こいつらに食べて貰うのが日課になっている
何より目の前で反応を見れるのが楽しいしこいつらのアドバイスも参考になるので都合がいい
ちなみに夏生も俺が「たかたかチャンネル」に動画をあげていることを知っている
「早速頂くぞ!! おお!! ほんのりと香る甘じょっぱいタレ!!
それを優しく包む牛肉 2つの素材の良さが奏でるハーモニー!!
最高だ鷹藤くん!!」
「これは美味い!! 夏生の言う通り豊かな香りと味だ」
2人とも1年の頃から俺の料理を食べているので変に舌が肥えている
のか食レポを始める
「それは良かったけど夏生声が大きい!」
「す、すまない!! あまりにも美味しくて!!」
(まぁ美味しいって言って貰えるのは嬉しいからいっか)
大きい声で話すと動画の事がバレかねないので夏生にはもう少し注意して貰いたい
(..!? 何処からか視線を感じる気が..)
「どうした大地? なんか気になるのか?」
「い、いや ちょっとな..」
(なんだ? 何処からだ?)
やはり何処からか視線を感じるのだそれも強い視線
俺は教室を見渡そうと顔を動かした..そしてその時!!
(!? な、なに!?)
俺が発見したのは衝撃の光景
「じーー」
なんと俺の正面 美少女グループで話していたはずの立花さんが
じっと俺の方を見てくる
(な、なんで 俺の方を見てくるんだ?)
「じーー」
「どうしたの?香澄ちゃん? 体調とか悪かったりするの?」
「大丈夫か? もしなんかあったら保健室まで運んで行くぞ」
奏さんたちも気になったのか立花さんに話しかける
「え.. あ!ごめんね 私ぼーっとしてて」
いきなり声をかけられて驚いたのか彼女の体が小刻みに震える
(何だ? 何で立花さんはこっちを見てきたんだろう)
俺の頭には疑問だけが残る もしかして俺が彼女を見過ぎだせいで
不快にさせてしまったのかもしれない
それくらいしか彼女が俺を見てくる理由がわからない
「鷹藤君大丈夫か? 何かあったのか?」
そうか俺以外の2人は位置的にあっちが見えないから
視線に気が付かなかったのか
「いや本当に大丈夫だ それよりもちゃっちゃと食べちゃおうぜ」
(二人に伝える必要もないか..)
その後も彼女の視線のことが頭から離れないまま午後の授業を
受ける事になってしまい気がつけば放課後になっていた
「はぁー」
「本当に大丈夫か? お前昼食から変だぞ?」
「僕も鷹藤君の事が心配だ!!だがすまない!!
今日は少し早いが帰らせて貰うぞ」
「そういえば彼女と帰るんだったな 気をつけろよ」
「ああ ではみんなまた明日!!」
「俺たちも今日は先に帰るぜじゃあな」
今日はみんな用事があるのかどんどん帰っていき男子チームは
俺と智紀だけになった
「お前なんか悩みがあるのか?今日はゲーセンでも行って気晴らしするか」
「ああ そうだな そうするか」
智紀のいう通りいつまで考えていても仕方がない
結局今日は立花さんと話せなかったけど明日こそ話せるはずだ!!
「よしじゃあ行くぞ」
そう言ってカバンを持って教室を出ようとしたその時だった
「あの!! 鷹藤君ちょっと良い..?」
小鳥の歌声の様な聞いているだけでしあわせになる様な
声が背後から聞こえる
その声を聞き恐る恐る後ろを振り向く
「ちょっとお話ししたい事があるの!良いかな?」
そこにいたのは憧れの立花香澄さんだった
二人きりで話したいと彼女が言うので階段の下の人があまり
通らないところに向かう
智紀とクラスの女子が何事だと覗きに来ようとするが先に帰って貰う事にした
(ど、どうしたんだ..あの立花さんから話って..)
憧れの女子が目の前にいるんだ 当たり前にもちろんドキドキする
(もしかしたら告白だったり..いや今日初めて話すんだぞ
いやでも期待して良いのか..)
歩きながらそんなことばかり考える
あり得ないことだと思いつつも告白だったりと思ってしまう
「あ、あのね 鷹藤君!」
階段下に着いた しばらくの沈黙があったが彼女の方から話を切り出す
「ど、どうしたの? もしかして俺なんか迷惑かけちゃったりした?」
「ち、違うの! 私君に聞きたい事があって!」
「聞きたい事? それって」
どうやら俺が彼女を見過ぎて嫌われている訳じゃないらしい
そうなると思い当たるのは一つしかない
(やっぱり告白なのか..?)
彼女が勇気を出す様に息を吸うそして..
「あのね!!...」
その時彼女の口から出た言葉は..
「鷹藤君も『たかたかチャンネル』す、すきなの??」
「え?」
告白でも何でもない まさかの身バレだったのだ
(そ、そっちかよ!!!)
続く
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