第5話 生活開始と新たな影
「ん、う……」
凄く寝苦しい、だがこうしないとクリスは眠れないというので仕方なくだ。そう、断じて仕方なく! !
胸で圧死されるのもありかも、とは思うが、しがみついてくる腕はそこまできつくはなく、多田は生殺しを受けねばならなかった。
しかもこのクリス、かなり芳しい甘い花のような香りがするのだ。
ああ、ここが天国かと真面目に思った。
豊満な肢体が絡みつき、欲を刺激してくるのにはかなり参ったが。
まあでも多田からも無意識下に腕を絡めてしまっているので、こいつ実は楽しんでる! ! となるのだが。
そんなクリスは夢の中、すやすやと満足そうに寝ている。
羽はない人間型をとっているので、旗目からみたらラブラブな二人にしか見えないのが玉に瑕だろうか。
不意にクリスは目を覚ました。
呼ばれた気がしたのだ。
だが、誰に呼ばれたのか分からずに寝惚けながら目を瞬く。蒼い双眼が潤み、微睡んだまま多田の部屋に張り巡らせた感知センサーを解除する。
すると、途端に脳内に通知が流れた。
【…、…ジジッ……あんた、どこにいるのよ……⠀】
クリスは脳内で返事を返す。
【バランサーのとこだよ〜、映像は送ってあるはずだよ? ⠀】
【…⠀死は防げたんなら、帰ってきなさいよ】
【寂しいの? 】
【…ジジッ、あんたがいないと張合いがないのよ! ! それだけなんだからね!⠀】
【はい、はい、わかったよぉ⠀】
【……ジジッ、それで、いつ戻ってくるの? ⠀神官様、カンカンよ】
【それは嫌だなあ。でもまだ帰れそうにないんだよぉー⠀】
【…、…ジジッ……わたしも……わ、⠀】
【え、なんてー⠀】
最後の言葉が聞き取れずに、通知は途切れた。
「なんて言ってたんだろ、まあ、いっか〜」
「クリス……うるさい……」
多田が嫌そうに眉を潜めて未だに目を閉じたまま呟くので、クリスはまた感知センサーを張り巡らした。
ついで、認識阻害魔法もかけておくと、なんでもないですよ、ご飯何たべたいですか? と多田に尋ねた。
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