見えない恋

こばおじ

第一章

第1話 恋

久しぶりに恋をした。

SNSで仲の良かった女性だった。

自分を飾らない素の姿がいいなと思った。

絡みやすく、冗談を言い合えるような仲だった。


俺は、リアルでは一切異性との出会いもなく、異性と仲良くなれるような機会も一切持ち合わせてはおらず、なおかつそこから脱しようともしない怠惰な毎日を過ごしていた。

だから、俺は唯一俺と親しくしてくれるその女性ともっと仲良くなりたいと自然に思うようになった。


その日、俺は一人家でお酒を飲んで酔っていた。

特に何かがあったわけでもない、ごく普通の日常のとある一日の出来事だった。

俺は、お酒に酔った勢いでその好きな女の子にメールを送った。



『正直に言います。

最近あなたのことが気になっています。

いいねやコメントされるだけで、顔も見たことないのにドキドキしてしまいます。

この気持ちを伝えるか否かで迷っていましたがお酒の力を借りて伝えることにしました。』


『別に好きってわけではないんだと思います。

ただ仲良くなりたいって気持ちは確かだと思います。

気持ち悪いって思われても仕方ないし、ブロックされても仕方ないと思います。

でも、好きなら伝えろよって俺自身がうるさいのです。』


『別にそれでどうこうしたいなんてこともありません。

あなたがこれまで通り元気でいてくれたら私は嬉しいです。

あなたの幸せを切に願っております。』


『・・・嘘です。

ブロックはやっぱりしてほしくないな(涙)

これからも仲良くしてくれたら嬉しい!

あーなんて自分は気持ち悪いんだろう!汗

でもどうしても伝えたかったので伝えました。

おやすみなさい。』



内容は上記のようなものだった。

今思うと恥ずかしいことこの上ない文章だ。

自分でも気持ち悪い文章だと思うし、書いてる最中も同じように思っていた。

だから、メールにも書いてあるように嫌われるのは正直覚悟していた。

よく女性は、仲が良いだけの男性はただ仲が良いだけというだけでその男性から好意を持たれたり告白されたりすると嫌悪感を持つ傾向にあるというのを俺は知っていた。

俺は、間違いなくその嫌悪感を持たれる対象になるだろうと確信していた。


なのに、何故想いを伝えようと考えたのか?

ただただ彼女への想いが溢れて、破裂しそうだったからだ。

何気ないくだらないやり取りに心動かされ、彼女のことを考えて毎日ドキドキし、いつからかもっと仲良くなりたい、近づきたいと思うようになってしまったのだ。

だから、自分の想いを隠さず、そして飾らずに伝えようと思った。

それが、"終わった後"でも後悔が少なく済む方法だと――何も言わないでいるより遥かにマシだと、俺は今までの人生の経験上理解していた。


『ありがとう。ブロックはしないから大丈夫。これからもよろしくね』


彼女からの返信は簡素なものだった。

"ブロックはしないから大丈夫"

俺は、彼女にそう言われたことがとてもとても嬉しくて『ありがとう。おやすみ。』とだけ返信して、その日は眠った。

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