第五章~モデルデビュー編~
第36話 緊急ギルド依頼!?
◇ステータス情報◇
【早乙女瑠奈】Lv.41(↑Lv.6)
・探索者ランク:B
・保有経験値 :2100
(レベルアップまであと、2000)
・魔力容量 :700(↑50)
《スキル》
○《バーニング・オブ・リコリス》(固有)
・消費魔力量:250
・威力 :準二級
・対単数攻撃用スキル。攻撃時に深紅の焔を伴い、攻撃箇所を起点として炎が迸り爆発。噴き上がる炎の様子は彼岸花に似ている。
○《狂花爛漫》(固有)
・消費魔力量:毎秒10
・威力 :二級
・自己強化スキル。発動時全身に赤いオーラを纏い、身体能力・肉体強度・動体視力などの本来持ちうる能力を大幅に強化する。強化量探索者レベル+10相当。
――――――――――――――――――――
月日は流れ、季節は移ろい十月中旬。
ダンジョン・フロートの街並みを紅葉した街路樹が彩っており、肌寒いながらも美しい季節。
これは、そんなとある日の朝。
休日のため瑠奈は朝からダンジョンに行くため、まずはギルドに寄って不足していたポーション類を買おうとしていたところ――――
「――あっ、早乙女瑠奈探索者!」
「え、はい?」
丁度レジで会計を済ませたところに、慌てた様子のギルド職員が声を掛けてきた。
「申し訳ありませんが大至急、南部第一地区のCランクダンジョンに向かって頂けませんか!?」
「し、Cランク?」
「はい! Cランクダンジョン内でBランクモンスターが出現するというイレギュラーが発生したとの連絡が入り……現在Cランク探索者数名が交戦中らしいですが、恐らくそう長くは……」
探索者ランクがB以上の探索者には、こうしてギルド側から直接依頼を寄こされることがあり、瑠奈もBランク探索者になってから二回ほどギルドからの依頼を受けたことがある。
そして、どうやら今回の案件は急を要するようだ。
こうして瑠奈に直接声を掛けてきたということは、とにかく今すぐに動ける即戦力が必要なのだろう。
「わかりました。ワタシ行きます」
「あ、ありがとうございます! 場所は――」
瑠奈の返答に一度表情を明るくしたギルド職員だったが、すぐに強張った顔に戻ってマップを見せながら瑠奈に目的のCランクダンジョンの位置を説明する。
南部第一地区――今いるギルド本部から、南に進んで一番最初の地区でそう遠くはないが、それでも徒歩で行けば十分強は掛かる。
「緊急ですので、今回は特例でダンジョン外でのEAD使用を許可します。最速で向かってください。お願いします!」
「了解で~す!」
瑠奈は言われるとすぐにEADを起動して、いつものダンジョン内でのゴシックドレス風の装備を身に纏う。
大鎌は走るのに邪魔なので、まだ仕舞っておく。
EADによって強化された身体能力。
生身では得られない圧倒的な速力。
瑠奈はギルド本部を飛び出して、大きく跳躍。
一体何事だと目を剥く往来の人々の視線を気にせず、街路樹や街灯を足場にして更に飛び、人の流れが邪魔な地上を避けて疾走する。
ビル群を足場にすれば、信号もないし人込みに邪魔もされない。
瑠奈が目的のCランクダンジョンに到着するまでそう時間は掛からなかった。
既に事情を聞かされているのだろう。
いつもの探索みたくダンジョンゲート前のギルド職員に探索者の証明をしなくてもすぐに通してくれた。
「さてさて、急がないと……」
ゲートを潜ると、そこはまるで荒廃したゴーストタウン。
倒壊した石造りの建物がずらりと並んでいるが、一体ダンジョンの中であるこの街には何者が暮らしていたのだろうか。
瑠奈はもう誰か住んでいるような人気もないゴーストタウンをまっすぐ走りながらそんなことを考えたが――――
「どうやら、まだ住人がいたようだね」
瑠奈の行く手を阻むように、倒壊した建物の合間合間から姿を見せるのは、Dランクモンスター【ゾンビ】といった人型だけでなく、Cランクモンスター【ゾンビ・ウルフ】を始めとする獣型まで様々。
唯一共通しているのは、もう“生きている”とは言い難いところだ。
そんな生ける屍共が瑠奈の前に立ち塞がろうとするが、呑気に構っている時間はない。
瑠奈は疾走する速度を落とさぬまま――むしろ気持ち加速しながら、EADの特殊空間から大鎌を取り出してその右手に掴んだ。
新品の頃はまだ純粋な透明だった刃が、今では仄かにルビー色に染まっていた。
それすなわち、これまで何度も何度も何体ものモンスターを葬り続けてきた証である。
そんな刃が――――
「あはっ!」
ズシャァ! と肉が斬り裂かれる音。
今更DやCランクのモンスターが瑠奈の進む足を止められるわけもなく、大鎌の一太刀で一掃された。
まだ新手が湧いて出てきそうではあるが、楽しくなって目的を忘れてはいけない。早々にイレギュラーで出現しているBランクモンスターを討伐しなくてはならない。
(それにしてもイレギュラーかぁ、懐かしいなぁ)
瑠奈はいつぞやの鋼鉄の鱗を纏った大蛇との一戦を思い出しながら、更にダンジョンの奥へと進んで行った――――
◇◆◇
「ぐぅ……クソッ!」
「勝てるわけねぇ……!」
「力が違いすぎる……!」
圧倒的暴力を目の前にして、全身ボロボロになって膝を付く三名のCランク探索者。
そんな彼らを後ろで見ながら、一人の金髪の少女が目元に涙を溜めていた。
(どうしてこんな……
少女も最初は戦おうと、自分の武器であるショットガンを構えはした。だが、銃口がまったく定まらなかった。
絶対に勝てない。
勝てるイメージが湧かない。
そう現実を訴えんばかりに、銃が、手が震える。
「だっ、大丈夫よアリサちゃん。ギルドに連絡して、今探索者を手配してもらってるから……!」
「ぷ、プロデューサー……」
震える少女――アリサの肩に手を置いた女性。
そう言ってアリサを安心させようとするが、女性自身も心穏やかでないことは、肩に置かれた手の震えが物語っている。
「ぐぁあああ!」
「駄目だぁ! もう駄目だぁ!!」
「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
護衛のために雇った探索者三人が、Bランクモンスターの攻撃を受けて大きく吹っ飛ばされる。
勝敗は決した。
ダンジョン内での勝ち負けは、すなわち生と死を意味する。
あぁ、もう終わった――この場にいる誰もがそう思った。
ギルドに救援を頼んだところで、すぐに駆け付けられるわけではない。
動ける探索者はBランク以上の精鋭。
しかし、ダンジョン・フロートの過半数がCランク以下の探索者だ。
その中で手が空いていて今すぐ動ける探索者を探すとなると時間も掛かるし、一人ならともかく探索者は基本パーティーで動く。人数の確保にも更に時間が掛かる。
とても、救援など間に合わない。
全員が、刻一刻と迫る死のカウントダウンをただ待つことしか出来ないでいると――――
「あはっ、やっと見付けたよ~」
そんな場違いに呑気な声が聞こえた。
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