嬉々とするのはだれか
!~よたみてい書
第1話
『こんにちは。お元気でしょうか? 私は元気です、と書きたいところですが、最近は稼ぎが悪くて、食事をまともにとれていません。このままだと餓死してしまいそうです。とてもお恥ずかしい話ですが、もう自分の力だけでは対処できないと判断しましたので、どうか食べられるものを恵んでいただけないでしょうか? 最近一緒にお話しする機会がありませんけど、友情が途切れていないことを信じています。受けた恩は必ずお返しします。もし助けて頂けるのでしたら、家の前に食料を入れた大きなかごを置いてもらえるとありがたいです。あとで受け取りに行きます』
扉の隙間に挟まっていた紙に書かれていた内容を読むと、友人から俺宛の手紙のようだった。
最近会っていない友人といったら、ヴァネアだろう。
彼女の危機になにもしないというわけにはいかない。
他人に施しをする余裕は感じられない家の中を進んでいき、食料置き場に足を運ぶ。
彼女に渡すには相応しくない、汚れが目立つ編かごの中に、とりあえず果物類を詰めれるだけ詰めた。
好みなどはあまり分からないけれど、とにかく栄養があり、腹持ちがよさそうなものを直感で選んでいく。
外に出て、賑やかな色になったかごを、扉の前に置いた。
周囲の騒々しい街並みと通行人の様子を確認する。
このまま家の前に置いてたら、盗まれてしまう可能性がある。
それだったら、彼女の言われた通りに従うのではなく、直接届けたほうが安全で確実だ。
手紙の通り最近会っていないので、どう話していいかわからなく、すこし緊張するけど、彼女の家へ向かおう。
何件かの家々の前を通り過ぎた時。
家というよりかはお店の中から声が聞こえてきた。
「あれー、もしかしてランクス? どうしたのそんな果物運んじゃってー」
カウンター前に、口元に手を当ててクスクスと笑いながら見つけている女性が一人。
美しい茶髪を小さく揺らしている。
ヴァネアだ。
「おー、久しぶり」
「うん、久しぶり。元気だった?」
「それはこっちの台詞だよ。お前こそ元気なのか? 大丈夫か?」
「え? 見ての通りぼちぼちー」
「手紙読んだぞ。稼ぎが悪くて食べていけないって。だから助けてあげようと思って、ほら、これをお前に届けようと」
抱えている果物たちを彼女に紹介する。
ヴァネアは不思議そうな顔で見つめてきた。
「パンなら食べきれないくらいあるから、別に困ってないよ? むしろランクスに分けてあげてもいいくらいだよ」
彼女は近くに置かれた商品のパンを指さしながら、もう片方の手を上下に揺らし続ける。
俺は一体だれに恵もうとしたのか。
背筋が一瞬寒くなったと同時に、彼女の無事を確認出来て安心できた。
嬉々とするのはだれか !~よたみてい書 @kaitemitayo
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