未来を救うNTRがあるんですか!?

愛内那由多

プロローグ

 少年は量産品のヘッドマウントディスプレイを手に取っていた。それはいわゆるタイムマシンで、過去に戻ることができる。

 彼の勉強机には、一枚の写真が飾ってある。普通、写真はデジタルのデータであることが多いので、印刷された写真は珍しい。

 写真に写っているのは――少年と彼の母。ふたりだけ。

 彼はそんな未来を、彼にとっての今を変えるために、タイムリープを決意した。

 彼の精神と記憶、脳の中に埋め込んだチップのデータのみが過去に行くことができる。チップは過去の世界の電子機器と通信できるので、タイムリープには必須だ。

 タイムリープには同じ時間に戻ることはできないという制限がある。一度戻った過去を再度やり直すことは不可能。加えて体に負担がかかるので、何回もタイムリープはできない。

 なので、本当に変えたいことにしか、タイムリープは使わない。

 彼はそんな未来を、彼にとっての今を変えるために、タイムリープを決意した。



 母親しかいないという現実を変えるために。父親と暮らしている今を手に入れるために。

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