第1話

 ●月×日


 誰かが僕のお気に入りの場所で甲羅を干している。いったい誰なのだろう。本来そこにあるべきはこの僕。今日はちょっと寝坊しただけなのだ。誰であろうと文句を言ってやる。いや、誰であろうという台詞は訂正しよう。顔に赤線が入っているやつ以外でお願します。


 ドキドキしながら水底を歩き顔を出す。ラッキー、赤線のヤツではない。なら僕と同種のやつか。否。姿がまるで違う。甲羅の後ろはちょっとギザギザしていて僕達みたいに三本の筋がない。あと、全体的に色が明るい。


 さんさんと照り付ける太陽がそいつを照らす。そいつはうっとりとした表情で、まるですべての幸を受け取るように陽光の中にいた。


 僕は太陽すら浴びてないのに体の温かみを感じた。

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