ラブストーリーは危機一髪

アオヤ

第1話

 今日は彼女との初めてのデート。

緊張しながら約束の場所で彼女が来るのを待った。


 待合せの場所は駅のそばの公園だ。

いつもはただ通り過ぎるだけの公園。

でも立ち止まってよく見ると、神社に隣接するこの場所は大きな木が繁る自然豊かな場所だ。

すぐそこには愛国神社の鳥居があり、奥には長い参道が続いている。

「愛国神社って… 確か縁結びの神様が祀られているんだよな? どうか彼女ともっと仲良くなれますように!」

困ったときの神頼み。

いやべつに困ってはいないか……

僕は鳥居の下で二礼二拍手一礼をする。

これからの事を思うと是非ご利益にあずかりたいところだ。


 時計を見るともう約束の時間だ。

そろそろ彼女も来るはずだ。

僕は大きな木の下で待つことにした。

そこに立って待っていると、アスファルトの地面に白い点々としたシミが着いているのに気がついた。

これって…

タバコの吸殻の痕だったら黒くなるよな。

もしかして鳥の糞の跡なのか?

こんな所に居たら頭の上に…

僕は慌てて2歩くらい後退りした。


「ねぇ、待った? 少し遅れちゃってゴメンね」

気づくと彼女は僕の眼の前に立っていた。


 鳥の黒い影がはしり頭上に停まった様に感じた。

慌てて僕は彼女の手を握り僕の方に引っ張る。

彼女の身体は僕の胸の内にすっぽり納まった。

そして彼女の居た場所の地面には白いシミが一つ増えていた。


 危機一髪だった。

だがこの展開は……

こんな事をして僕の恋がもう終わりなんじゃないのか?


 彼女の顔がすぐそこにある。

彼女の顔が近い。

彼女の瞳の中に僕の顔が写っている。

僕はなんだか恥ずかしくなってしまい、顔が赤くなっていく気がした。


 彼女は僕の顔をジッと見ていた。

彼女の顔もみるみる赤くなっていく。

「悠さんって… こんな強引なところもあるんですね? でも、こんなところも嫌いじゃないです」


 僕は慌てて彼女の手を離した。

「鳥の糞が落ちて来たから… ビックリしたよね。ゴメンね」


 彼女は目を細めて笑っている。

「悠さんは優しね。ありがとう。今日は楽しいデートにしようね」


 あれ、僕の恋も危機一髪で……

これも愛国神社の神様のご利益なんだろうか?

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