僕らのミッション(8)

「山谷さんって、何組?」

「D組よ」

「あー、どうりで見かけないよね」


 僕らの学校は三年間クラス替えなしで、一年、二年、三年のA組からC組までは西校舎、D組からF組までは東校舎に分けられている。


「で、柏崎くんたちは、夜の学校でなにをしているの?」

「それは、こっちの台詞。山谷さんはなんでここにいるの? というか、どこから入ったの?」

「入ったのは、体育館倉庫の窓から。なぜか今日はそこだけ開いていて」


 ニヤリと目を細めた彼女は、僕を見ている。


「もしかして、知ってたの? 僕が今日体育館倉庫の窓を開けておいたこと」

「フフッ、さあね? でも、明日になったら気づいた先生や警備員さんに閉められちゃうかもしれないじゃない? だったら今日しかないな、と」


 よく見たら彼女の格好も僕らと同じ、黒づくめ。

 黒いTシャツに黒いショートパンツ、白い足が見えないようにか黒く長いニーソックスを履いていた。


「まさか、山谷さんも、あの片山カタブツ先生に何か没収されたの?」

「うん、リップと鏡」

「それなら別に夏休み明けでも良くないか?」

「考えてみて? ひと夏を越したリップ、デロンデロンに溶けてるから! そんなの使いたくないじゃない」


 口をとがらせた山谷さんを、わかるわかると慰めるタケ。

 おい、タケ、オマエはリップ使ったことあるんか?


「ねえ、目的の場所は皆同じよね? 生徒指導室」

「う、うん」

「じゃあ、一緒に行ってもいい? 一人で心細かったんだ」

「ぜ、ぜひ!!」

「山谷さんは、俺の後ろ歩きなよ、危ないからさ」


 声が上ずって嬉しがるタケと、いい恰好をしようとするレンレン。

 どうせ目的の場所は同じだしと僕も同意した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る