危機ボーボー

姑兎 -koto-

第1話 凶運と強運は紙一重?

ぞわっとした気配が走った刹那、誰かに引きとめられる感覚。

瞬間、目の前を猛スピードの車が走り抜ける。

まさに、危機一髪。


「君は救世主に選ばれた。10日後の逢魔が時、迎えに来る」

あの夢を見てから一週間、デンジャラスな日が続いている。

平凡な女子高生 神薙かんなぎ佐那さや15歳。

ただの夢だってことはわかってる。

そもそも、こんな私が救世主に選ばれるわけが無い。

ってか、私の方が救って欲しいくらいだ。

うん。ありえない。

無いとは思うけれど。

他にこの現象の理由が思い浮かばない。


ショッピングモールの階段でカートが落ちてくるとか。

入ろうとしたお店に車が突っ込んでくるとか。

部屋に入ったら棚が落ちてきて畳に刺さったとか……とか……とか。

その度に妙な気配に引きとめられて助かってきたけれど。


だとしても、救世主の命を狙うっておかしいよね。

これも何かの試練?

それとも、夢とは関係なく、凶運と強運は紙一重ってこと?

危機一髪もこれだけ集まれば、危機モフモフ、否、危機ボーボーだ。

いみじくも、ここの地名は『有毛』

地名のせいで危機さんが多毛で頭ボーボーになってるなんてことはないよね。


兎に角、今日も神社に向かう。

通学途中にある神社。

神社の裏に家があるので、子供の頃から毎日のように通り抜けるついでに参拝している。

由来は知らないけれど、由緒ある神社らしい。

奥に人一人入れるくらいの祠があり、閉じた扉の前には、いつも猫のシロが鎮座していた。

尻尾がモフモフの奇麗な白猫。

いつの頃からかシロの餌やりが私の日課となり、デンジャラスな昨今となっては、唯一、私が安心できる場所になっている。


今日も、餌をあげながら、シロに話しかける。

ねえ、シロ。

どう思う?




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