おれ、危機一髪
雪うさこ
おれ、ロックオンされる。
パンダは走っていた。自分の足ではない。飼料運搬用の荷台に乗って——だ。
普通。荷台とは人が自らの力で動かすタイプが多いものだが、この荷台にはAIが搭載されていた。日頃は、人間の指示にしたがい、所定の場所に餌を運ぶのが仕事なのだが。今日は何故か。パンダを乗せて走っていたのだ。
(こいつは使える!)
「ミギ ナナメ コウホウ ヨリ ツイビガタ ミサイル ガ セマッテ イル。ソノ キョリ100」
AIは女性の声でそう言った。白と黒の毛並みが風に流れてゆく。息が上がった。目の前が歪んだ。しかし止まれない。背後から迫りくる、もふもふ追尾型ミサイルをどう振り切るのか。パンダは必死に考えていた。
「くそ……っ! な、なんなんだ! なんで、おれが——」
パンダを乗せた荷台と並走してくる軽装甲機動車に乗った男が、拡声機でパンダに警告をした。
『どうだ。パンダ。お前の命は我々の手の中。わかったか? さあ、パンダよ。さっさと、おとなしく戻らないと、ほら——もふもふだけを感知して、地の果てまで追いかけていくミサイルが、お前のケツにぶち込まれるぞ』
(うう……。なんで。なんでこんなことに……。おれはただ、病気療養をしていただけじゃないかー!)
パンダがこのハリウッド映画のワンシーンのような状況に追い込まれた理由はなぜか? それは一時間前に遡る。
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