元迷宮攻略特殊部隊の探索者
沙羅双樹の花
第1話 プロローグ
虹色の
視界の端から鮮やかな色彩が剥げ落ち、澄み渡るような青空へと塗り替えられる。
白銀の雪景色は灰色のコンクリートに、凍てつく湖畔はなんてことの無い公園に、雪を抱えた針葉樹は道路に植えられた街路樹に。
雄大な大自然の光景は、人工的に作られた街並みへと戻っていく。
『
名残惜しいな。
絶景写真のような景観に内心、感嘆の想いを抱いていた俺──天河 悠希は素直にそう思った。
都会の光景に似合わない黒の
『こちらD1。迷宮の消滅を確認した。D6、状況を報告しろ。』
隊長からの無線だ。
「D6、核を破壊しました。魔晶石も回収済みです。」
そして、最後にこう付け加えた。
「あと、俺仕事辞めます。」
滅茶苦茶、怒られた。
◇
──迷宮災害。
2024年を皮切りに自然発生するようになった『迷宮』は、人類に対して様々な恩恵を齎した一方で、深刻な問題を引き起こしていた。
そして、2040年、現在、世界中で最も問題視されている災害となった。
『迷宮』とは、
内部では独自の法則が働いており、不可思議な現象や異形の生命体が確認されている。
そして、問題となるのが『迷宮』のとある特性である。
それは、発生時に周囲の空間を取り込んで、現実を上書きするというものだ。
そして、100時間弱の時間が経つと『迷宮』は安定化、以降は核を破壊しても決して元に戻らなくなる。
これが問題だった。
分かりやすく言えば、100時間の
もしも人類の活動領域で『迷宮』が発生すれば、場合によっては数万、数十万人の人命が喪われる事が予想される。
特に人口の密集しやすい日本ではぞっとしない話だ。
かといって、人が居なければ良いという訳でも無い。
こちらはこちらで問題が起きていた。
『迷宮』の発生件数が年々と増え続けた結果、人類の生息域を圧迫し始めていたのだ。
アメリカの研究機関が『迷宮による世界侵略』という見出しで、各大陸の約2割が迷宮化している事を発表し、世間を騒然とさせたのは記憶に新しいだろう。
その際に被害が甚大であったのは、迷宮の破壊が行き届きにくい過疎地域や無人地域だった。
人の密集地域、過疎地域、両方において猛威を振るう迷宮災害は、最早、地震や噴火にも勝る人類の脅威となっていた。
こうした迷宮災害に対して、迷宮庁は次のような言葉を残している。
──『迷宮』は、可及的速やかに破壊しなければならない。
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