第15話 実在しただとぉ!?

ばーむちゃんのカロリー補給も滞りなく終わり宿の戻ってきた俺達を待っていたのはミーちゃん改めレモンちゃんだった。


「お時間よろしいでしょうか‥‥ハム様」

「だからハムじゃ‥‥ってもういいや。時間は有るけど?」

「では…申し訳ありませんがご足労頂けないでしょうか?」


(ふむ。妙に硬い感じだな‥‥ばーむちゃん)

『はいな。まぁ恐らく危険は無いと思いますよぉ~?』

(だろうね~まぁ危害を加えるならもっと早段階で仕掛けてくるだろうしね)


「了解だ。案内を頼む」

「はい…ではこちらへ」


そういって連れてこられたのは珍しく人の居ない酒場だった。


そして今朝見かけた青春劇をかました男女が並んで座っていた。


(なーるほど‥‥そう言う事か)

『ん~どういう事ですかぁ~』


おい。なんで超高性能AIがわからんのですか!


(左端に座ってる女の子がレモンちゃんの事を『お姉ちゃん』と呼んでいた。なので知り合いで有る事は間違いない。そして彼らはレモンちゃんの不祥事を知らないで文句を言いに来たのか知ってしまったから謝罪に来たのか…まぁそのどちらかだな)

『‥‥へぇ~』

(いや…へぇ~って)

『いやぁ私の根幹は【案内役】なのでマスターに関係が薄い事情には基本ノータッチなんですよ』

(な、なるほど‥‥)


こういうところは物凄くドライ‥‥というか職務に忠実だよね。

まぁ本来スキルとはそう言うものなのかもしれないが…俺も認識を改める必要があるな。


「ハム様、紹介します。彼らは私の所属する冒険者パーティー【光華の雫】のメンバーで右からリーダーのマーク。その横がケイコ、そして最後に妹のライムです」


「「「よろしくお願いします」」」


「よ、よろしく‥‥(マークにケイコだとぉ!?TATUYAはどこだ!てつやー!)」

『ステイステイ!マスター!ステイですよ!』

(イヤイヤ。マークとケイコだぞ?なのになんで最後がライムちゃんなのよ!?普通はTATUYAだろ!?『そーだよ!アホだYO!!』って出来ないじゃん!)

『ハウス!マスターはハウス!ソレをヤルなら『パーク』『コイケ』じゃないと!あとそのスペルだと『たつや』だよ?』


「‥‥Oh!!Mistake!!!」

「「「「?」」」」

「失敬」


(あー済まない‥‥柄にもなく興奮してしまった‥‥)

『いえ。柄通りなのでソコはご安心下さい‥‥で?落ち着きましたぁ~?』

(ああ、なんとか)


「あー先程は失敬した。ゴホン。改めまして俺はユーハイム。つい2週間前にこの街に来たばかりの旅人だ」

「それで‥‥その‥‥すみませんでした!」


真っ先に頭を下げたパーク‥‥じゃなくてマーク君

恰好はまんま戦士って感じの装備でパーティーでは前衛を務めているのだろう。それに‥‥イケメンって感じじゃないけど彼以外は全員美少女ぞろいだ。


「えーっと?何に対する謝罪かな?」

「‥‥そこに居るレモンが遣らかした犯罪行為についての謝罪です」

「そうですか‥‥一応伝えておきますが今回の件については当人同士での示談も成立してますし宿の責任者であるバーさんも認めている事ですので改めての謝罪は不要です」

「話は聞いていますが‥‥改めて謝罪をさせて下さい。ハム様のご厚意で彼女が拘束されていないのでから!」

「‥‥」


っく!初対面に奴に『ハム』呼ばわりをされるのはイラってくるぞ?

これはアレだな?謝罪じゃなくて喧嘩を売りに来たな?


「それで?用件とは謝罪だけかな?」

「いえ…身勝手な事とは思いましたがお願いがあります」

「お願いとは?」

「俺達はこれからこの街を離れて故郷に帰るのですが…彼女も連れて行きたいのです」

「?ご自由にどうぞ?そもそも俺の許可は必要ないですよ?」


罪滅ぼしに労働を科しているだけなので守る守らないは自己判断に任せているのでこれまで彼女の行動について口を挟んだ事はない。


「それが出発時期が問題でして‥‥」

「出発時期‥‥あぁ!つまり奉仕期間中に出発するから任期満了出来ないから早引けしたいって事ね?OK!いいよ。許可します」

「え?‥‥あの?良いんですか?」

「ええ。いいですよ。彼女はこれまで必死で自分の罪と向かい合って来てましたからね。その反省の態度に免じて今日を持って無償奉仕から解放しましょう。但し宿の仕事についてはご自身で調整して下さい」


「あ、はい!ありがとうございます!」


いやぁ~ちょっと予想外だがこれで一先ず目標達成だ!

レモンちゃんはこれで無償奉仕から解放されて宿から消える…それに私も付いて行きます的なフラグはお仲間によって回収されたし!


ハハハハハ!

あーこれで明日らかまくらを高くして寝れるぜ!



余談


「ところでマークさんは戦闘職なんだろ?って事は戦闘系のスキルをもっているの?」

「いえ。ぼくのスキルは‥‥【イケメン】です!」

「うっそ!?マジかよ!!‥‥‥まさか実在していたとは」


この日一番の驚きでした。


終わり。

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