人狼転生 ~ 魔王直属の忍者部隊を辞めた俺はスローライフをおくりたいのに周りが放っておいてくれない件 ~

マーシー・ザ・トマホーク

第1話 プロローグ

新作なので、皆さんの反応が楽しみなような、怖いような・・・・・・。

なんとか頑張っていきたいと思っています。


ただ、ちょっと闘病生活の合間にベットの上で執筆している関係で、投稿が不規則になる可能性があります。

出来れば毎日投稿したいのですが、ストックが切れたら週一回か二回程度になるかもしれませんので、先に謝っておきます。


申し訳ありません!


ストックも何日分あるんだろう・・・・・・? 10日分もあるんだろうか。

出来るだけその間に書き足すようにはしたいと思っていますので、見捨てずに応援お願いします!


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 発端は本当に些細なことだった。


 国境近くで警備する兵士同士の衝突があり、どちらかが越境したとかしないとか、そんなよくある話だったのだ。


 お互いにとって不幸だったのは、紛争を起こした国境線が、魔族の住む国と人間の住む国だったということだ。


 両国はお互いを非難し、謝罪を求める声明を出す。

 慎重な態度で冷静に交渉するよう指示した魔王に対して、人間側の王は国内の好戦的な気運にのって高圧的な物言いに終始した。

 

 人間という生き物は、自分たちと違うものは徹底的に差別し、忌避しようとする生き物だ。 

 同じ人間同士でも肌の色が違うだけで差別するのに、姿・形が違う魔族や亜人を、人間たちが差別しないわけがなかった。


 人間は魔族や亜人が自分たちより強いとか、優れているなどとは決して認めようとはしない。

 

 そのくせ、心の中では強大な力を持つ魔族や亜人を恐れているので、攻撃的になりやすい。


 要するに魔族や亜人を排除することで、自分たちの心の不安を取り除き、安心したいのだ。


 翻って魔族や亜人は、人間と比べてどっちがどうなど、全く気にしていない。

 はっきり言って人間などと自分たちを比較したことなど無いし、興味も無い。


 魔族や亜人に言わせれば、そんなの比較する必要も無いし、どうでもいいよというのが本音だろう。


 仮に身体能力や戦闘力、種族によっては知能も人間よりはるかに優れていたとしても、それがその種族の固有能力なのだから当たり前のことだろう、くらいにしか思わないのだ。


 その態度がまた人間には、魔族や亜人が直接口にしなくてもなんとなく態度で伝わるため、余計に癇に障ることになる。


 そんな行き違いもあってか、遂に人間の王は魔族と亜人の国に対して、宣戦布告をしてしまった。


 魔族や亜人としては、人間とは今までお互いに交易も盛んだったし、どちらの国を行き来するのも自由だったので全面戦争までする気は無かったのだが、事ここに至っては止むを得ない。

 

 不幸なことに次第に戦火は広がりを見せ、戦争は2カ国間にとどまらず、王国の呼びかけに応じた人間の国が3カ国ほど加わって、人間の軍隊は4カ国で総勢25万人余にまで膨れ上がった。

 

 魔族の国も対抗手段として獣人の国や亜人の国と3カ国連合を結ぶ。

 その結果、魔王を盟主として戴いた魔王軍が誕生したのだ。

 がしかし、魔族も亜人も人間に比べて元々人口が少ないこともあり、半分以下の10万人弱の兵を集めるのが精一杯だった。


 そのため、緒戦は数の暴力で人間たちが優位に立つ。


 魔王軍は敗戦を重ねて撤退を繰り返し、追い詰められ、人間たちも勝利は時間の問題と楽観していた程だ。


 ところが2年、3年と戦争が続くうちに、風向きが変わり始める。


 魔王軍は正面からの決戦を避け、徹底してゲリラ戦を主体とした攻撃に切り替えた。

 人間たちが大軍を繰り出すと煙のように消え、人間軍の背後に現れては攪乱し消耗させる。


 人間軍を自陣に深く誘い込んだと思うと、長く伸びた補給路を寸断し、物資を奪ったり焼いたりしたので、人間軍の将兵たちは飢えに苦しむことになる。


 また人間軍の参謀本部がたてた極秘作戦がことごとく破られたため、内部からの情報の漏洩が疑われて各国の間で犯人探しが始まり、お互いが疑心暗鬼となってしまう。

 4か国の寄せ集め軍隊なのに、それぞれが信用できなくなってしまったら、共同作戦などは機能するはずもない。人間連合軍は自壊の危機を迎えていた。


 そのうえ人民の間にも、王国軍などが起こした残虐行為や自国民をも巻き添えにした虐殺など、フェイクも交えた情報が広く出回ることで、厭戦気分が広がり始めた。


 それは次第に大きなうねりとなり、それぞれの国民による反戦運動にまで発展する。

 デモ隊が王都を練り歩き、大規模な集会を開く。

 デモを鎮圧しようとした騎士団と、流血の争乱まで起きてしまう。


 こうなると人間軍の中には自国内を抑えるために、軍隊を連れて帰ってしまう国も出てくる始末だ。


 戦争が長く続き過ぎたのだ。

 そもそもの当事者である王国にしても、自国民の反発を無視できなくなってしまうほどに。


 そのタイミングでエルフの国から、それぞれの陣営に使者がやってきた。


 エルフの王であるハイエルフの名前で、人間連合軍と魔族連合軍の和議を薦めるものだった。

 ハイエルフが仲介を買って出たことで、国民世論は和議を受け入れるべきだという意見が大多数となる。


 それからしばらくして、停戦の条件を話し合うのに半年ほどかかったが、遂にエルフの仲介により和議は成立することとなった。



 和睦の調印式はエルフの国にある中立地帯でおこなわれた。

  

 人間軍の総司令官だったヴィルヘルム王は、かつては逞しく意気軒昂で「獅子王」の異名を持つほどだったが、今や身も心も疲れ果てていた。


 隆々たる筋肉も衰えてしまい、自慢の金髪や髭も白っぽくなってみすぼらしい。

 既に戦争を引き起こした責任を追及されていて、今後は退位して王位を王太子に譲位することが決まっている。

 終戦までは責任を取る意味で、王太子と共に調印式に出席していた。


 調印の相手は魔王軍の司令官であるウォードン魔王だ。

 

 ウォードンという名前から、どんなに恐ろしい風貌の魔族なのか、と人族は恐れていた。

 ところが調印式に現れたのは、黒髪を背中まで伸ばした、華奢な少女のような魔王だった。

 整った顔は完璧なまでに美しいが、額には鬼のような二本の角が生えている。


 見た目は少女だが、纏う雰囲気はとても侮れるようなものではなく、魔王としての威厳は紛うこと無きものだ。

 普段は柔和な表情だが、ふとした時に見せる鋭い視線は、向けられた者が氷で心臓を掴まれたような気にさせられてしまう。


 調印式は無事に終了し、そのあとにエルフ主催で晩餐会が開かれた。


 晩餐会の席で、人間軍の総司令官だったヴィルヘルム王は、魔王軍のウォードン王に声をかける。


「ウォードン魔王陛下。改めてご挨拶申し上げる。アロガンス王国国王のヴィルヘルムと申します。この度は和平に応じて頂き、誠に感謝いたします」

「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。魔人の国アエテルヌスの王、ウォードンと申します。こちらこそ、感謝しておりますわ。不幸な行き違いから起こった戦争がようやく終わり、ホッとしました」


 ヴィルヘルム王の持つグラスに、ウォードン魔王が自分のグラスを軽く当て、チンッと音をたてた。


「13年は長過ぎました。これからは平和な時代が来ることを期待しています」


 ウォードン魔王はヴィルヘルム王に、ニコッと微笑みかけ、グラスのワインを一息に飲み干した。

 ドギマギしながら、つられてグラスのワインを干したヴィルヘルム王は、なんとなく落ち着かずに次の話題を探す。


「ときにウォードン魔王陛下。もしよろしければ、是非お聞きしてみたいと思っていたことがあるのです」

「まあ、なんでしょう。私が答えられるものであれば」

「感謝いたします。この長きにわたる戦争の始めは、人間軍が圧倒的に有利であったように記憶しています。ところがいつの頃からか、互角となり、さらには我が軍が劣勢にまで追いやられてしまうことも多かった。この方針転換は魔王陛下のお考えからなされた事なのでしょうか? それとも優秀な参謀がおられたとか」

「ウフフ・・・・・・」


 ウォードン魔王は笑みを深くし、悪戯っぽく笑う。


 その表情は清楚だった少女が、いきなり成熟した大人の女性に変わったかのような変化をもたらし、凄絶なまでの色気を感じさせるものだった。

 ゾクッとしたヴィルヘルム王は蛇に睨まれた蛙のように動けない。


「それは軍事機密ナイショですわよ、ヴィルヘルム陛下。でも、申し上げるなら、私の考えではありませんでしたわ。もちろん承認したのは私ですけど」

「軍事機密といえば、我々の作戦が漏れていることが非常に多かった・・・・・・。誰か我々の中に裏切者がいたということでしょうか?」

「さぁ? 細かいことまでは私は知らないの(知っててもいう訳ないだろボケ)・・・・・・。ウフフ、強いて言うなら全ては忍者のおかげかしら・・・・・・」

「ニンジャ? ニンジャとは人の名前ですか?」

「フフフッ、あなたたちは『悪霊ナイトウォーカー』と呼んでいるんでしたっけ?」

悪霊ナイトウォーカー!! 黒狼ですか!」

「あらいけない、どうやら私、お酒に酔ってしまったようだわ。ヴィルヘルム陛下、もう失礼してもよろしいかしら。お会いできてうれしかったですわ」

「・・・・・・」


 嫣然と微笑みながらウォードン魔王は歩み去る。

 それを見送りながらヴィルヘルム王は、空になったグラスを握りしめたまま、その場を動くことができなかった。

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