第26話 失恋?

 その後は特に会敵する事もなく、アリーナとダルトン達決死隊は明け方近くに6Cに入った。アルマンと非戦闘員組も、かなりの犠牲を出したが約半数が6Cにたどり着く事が出来た。アルマンが6Cのメンバーと情報を整理しているが、小隊二つを無力化した事で敵も立て直す必要があると思われ、ここへの攻撃はすぐないだろうと予測された。


 JJはココアを背負ってここまで来たが、医師によってココアの正式な死亡確認がなされた。


「JJ……」アリーナは懸命にJJに話かけるが彼の瞳には光が全くなく、まるで亡者の様だった。


 そしてお昼すぎ、別のブランチのレジスタンスメンバーが6Cに着いた様だ。 


「あー!! スフィーラ。JJ! よかった、無事だったんだ!」

「えっ? あー! メランタリ! あなたもここに来たんだ!」

「ええ。4Jも雲行きが怪しくなってね。

 囲まれる前に他のブランチと合流しようって」


「そうなんだ。でも元気そうでよかったよ。なんかたくましくなったね」

「そりゃそうよ。スーパーのレジ打ちが、毎日腕立てと腹筋ばっかりやってんだもの。たくましくもなるわ。

 それにね、獣人チームは女性が少なくて、私モテモテなのよ。

 ……で、JJどうしたの? なんか元気ないけど……」

「それがね……」


 アリーナが、昨晩の事をメランタリに説明した。

「!! そんな……そんなひどい話ある!?」

 メランタリもその場に座り込んでしまった。


 ◇◇◇


 一方。エルフ軍レジスタンス包囲作戦前線本部。


「少佐。出ました!! アンドロイドです。

 やはり女性型で、小隊が二つばかりやられました。

 でもこれで奴がレジスタンスと共同戦線を張っているのは確実ですね」


「それで、キャンセラーはどうだったんだ?」

「それが、キャンセラーを保持していた小隊が真っ先にやられた様で、アンドロイドにキャンセラーが効かないかを確認する事は出来ませんでした」

「ふむ。それではもう少し様子見だな。

 キャンセラーが怖いから先に対処したと考えるのが妥当な気もするし」


 そう言ってサルワニは、椅子に腰かけ直した。

 そう。自分がわざわざこっちの世界まで出張ってきたのだから、せめてアンドロイドとは一戦交えたいのが本音だ。

 しかし……やはり女だとなると、直接戦う機会は来なくてもいいかとも思う。


 自分の一族は代々、王室からナイトの称号を頂いている武勇の名門だ。

 作り物のアンドロイドとはいえ、女を手にかけるのは騎士道にもとる。

 自分は決して男尊女卑ではないと言い切れるのだが、女相手では戦う手が鈍ってしまいそうで、やはり女の戦闘アンドロイドなどはゲテモノと言わざるを得ないなと、あらためて思った。


 ◇◇◇


 夜になって、レジスタンスの幹部たちが集まる会議が催され、アリーナもアルマンに呼ばれ参加する事になった。

 JJは、いまだ魂が抜けた様に呆けてしまっており、彼の事をメランタリに託したが、当のメランタリもココアの死に相当衝撃を受けている様だった。

 無理もない。モンデルマの一件から、まだ半年も経っていないのだから。


 会議では、このまま6Cに留まっていてもジリ貧なので、以前アルマンが言っていた様に、フラボイ山地近くの1A要塞に集合して、守りを固めようという事で方針が決まった。

 一か所に集まって、集中攻撃されたら全滅ではないかという危惧も聞かれたが、ここにとどまっていても全滅しかなく、少しでも確率の良い方に賭ける方がいいだろうという流れだった。

 そうと決まれば、さっさと移動準備に入ろうと、各メンバーに役割が割り当てられはじめた。


(ああ。会議が長引いて、こんなに夜遅くなっちゃった。JJ大丈夫かしら? 

 メランタリが付いててくれて助かったけど、彼女もかなり動揺していたし……)


 そんな事を考えながら当たりを見渡すが、JJとメランタリの姿が見えない。

 ダルトンがいたので、JJの行方を聞いてみた。


「ああ。まあ、あんなに呆けちまっていたんじゃとは思ったんだが、猫の手も借りたい状況だからな。地下の倉庫に、弾薬の残数確認に行かせたぞ」

「そう。ありがと」

 そう言って、アリーナは人に場所を聞きながら、弾薬庫を目指した。


 ◇◇◇


 6Cの弾薬庫は人がいる居住区からちょっと離れていて、くぼ地に人力で穴が掘られていた。


「もう。なんでこんな分かりにくい所にあるのよ……」

 アリーナが悪態をつきながら地下に潜っていくと、下から人の声が聞こえる。

(JJかしら?)


 そして奥に行くにつれ、その声は大きくなっていくが……

 これって、何か苦しんでる?

 急にJJが心配になって、アリーナは小走りに奥の部屋に向かい、そしてその戸口から中を覗いてギョっとした。


(えっ? JJ……メランタリ……二人で何を……って、あっ!)

 アリーナはスフィーラの体内温度が急に上昇した様な気がした。


 そこでアリーナが見たのは、男女の行為をしているJJとメランタリだった。


(うそ! 二人がこんな……。

 でも……こうでもしないと……心が壊れちゃうの……かな……)


 アリーナが男女の営みを目撃したのはもちろん初めてだ。

 声を殺して、その様子をじっと伺う。

 そして、スフィーラの下半身と股間がどんどん熱を帯び始めているのが、はっきりと分かった。


【本機の性感モニターが極大値を示しています。アリーナ。自慰を推奨】

(馬鹿! そんな事する訳ないじゃない!!)


 だめだ、ここにいちゃ……そう考えて、アリーナはそっと後ずさる。

 しかし、後ろ向きに進んだため、落ちていたボルトを踏んだ事に、すぐ気が付かなかった。


「きゃっ!!」しまった。バランス崩して声出しちゃった!!


「誰!?」メランタリの大きな声がした。


(ダメだ……私だと気づかれちゃだめだ!)

 アリーナは体制を立て直し、一目散にその場を離れ去った。


「誰かに見られたかも……ごめんねJJ」

「……関係ない。それよりメランタリ。もっとそばにいてくれ。

 思い切り俺を抱きしめてくれ。もう全て忘れたいんだ……」

「うん、わかった。それじゃ……もう一回、しよ……」


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