第19話 やっと会えたぞ!


【すぐに地上部隊が来るはずです。早くこの場を離れて下さい!】


 ヘリが戦闘機に爆撃され、木っ端みじんになって燃え盛っている。

「私の普段着ぃ…………ええい。切り替えるわよ! でも、どっちに逃げれば?」


「おい、お前ら!!」

 アリーナがキョロキョロしていると、森の中から声がして、さっきアリーナを痴女呼ばわりした男が出て来た。


「何よあんた!? 

 もうヘリも吹っ飛んじゃって、何にも取る物なんかないわよ!」

「違う違う。山賊じゃねえって。まあ、あんなのに追いかけまわされてたんじゃ、エルフから逃げて来たってのも嘘じゃねえんだろうさ。

 まだ信用したわけじゃねえが……とりあえず……ついて来な」


 そう言って男は、アリーナら三人を先導し始めた。


 その後、アリーナ達は、男の後に続いて、ブッシュの中や岩の隘路、トンネルなどをくぐって行き、最後に大きな洞窟に身を寄せた。どうやらここが、この男達の活動拠点なのだろう。


「あの……助けてくれてありがとう。私はスフィーラ。あなたは?」

「俺はアルマン。山賊だ」

「えっ!?」

「いや、ウソウソ。一応このあたりを根城にしているレジスタンスを名乗っている」


「えっ!? おっさん、レジスタンスなのか?」

 JJが近くに吹っ飛んできたが、アルマンはそれを制して言った。


「とりあえず細かい話は後だ。

 まずは敵さんの地上部隊を煙にまかないといけないんでな。

 それから、一応、お前らをまだ信用した訳じゃないんで……すまないが、ちょっと牢に入ってくれないか? そうしないと、部下達も安心して動けねえ。

 何、心配するな。悪い様にはしねえよ」


 アリーナ達はアルマンの言う事に従い、洞窟の奥に作られた牢に収まった。


「やったなスフィーラ。レジスタンスだってさ! なんてラッキーなんだ……」

 JJは一人ではしゃいでいるが、アリーナはちょっと不満げだ。

「ねえスフィーラ。私もここでレジスタンスに会えたのはラッキーだと思うんだけど……何が気に入らないの?」


「えっ? ああ。

 正直、この規模じゃ、エルフに対抗するなんて、全く無理っぽくない?」

「あっ、そうか。確かに……」メランタリもとたんにちょっと不安になって来た。


「食事をどうぞ」

 年の頃は十歳前後だろうか。人間の少女がパンとスープを持って来てくれた。

 

 メランタリとJJの視線がその子に集まる。

「こんな小さな子もレジスタンスにいるんだ……」

 JJの眼がちょっとうるんでいる。

「ねえ、あなた。お名前は何ていうの?」メランタリが少女に話かける。

「……教えない」そう言って、少女は奥に引っ込んで行った。


「あーあ。まだ警戒されてるみたいだね」

 アリーナがそう呟いたが、二人とも目に涙を浮かべて、黙ってパンを見つめていた。

 

 ◇◇◇


 アリーナが牢の中でうとうとしていたら、人の声が多くなってきた。

 アルマン達が戻ってきたのだろうか。洞窟の中は陽が入らないため時間が良く分からないが、モルツに聞いたら牢に入ってから八時間位経ったらしい。


「よお。待たせたな」

 そう言ってアルマンが牢の前まで来た。


「お帰りなさい。それで敵はどうだった?」アリーナが尋ねる。

「ああ、いつもの通りさ。こっちの都合のいい様に敵さんを誘導して、そのまま煙に巻いてきた。まだ当面はこれで大丈夫だろ。

 それで……それじゃそっちの身の上話を聞こうじゃねえか」


 牢に入ったままだったが、アリーナ達は自分達の身の上をアルマンに説明した。


「…………そいつぁあ……辛かっただろうな。

 しかしオメエら。よくそれで、ここまで逃げ切れたもんだ。

 ヘリを操ってたのは……痴女。オメエか?」

「痴女じゃありませんって! アリ……じゃない、スフィーラです!」


「どこで軍事教練受けた? オメエみたいのが戦中派な訳ねえしな」

「あー……黙秘権を行使します」

「ふうー。それじゃまだ信用出来ねえな。今、モンデルマの様子を探らせている。

 お前らのいう事が事実ならば、そん時また考えるさ」


「それで……アルマン……さん! 

 レジスタンスって、ここにいる人だけなんですか?」

 アリーナがアルマンに問う。


「オメエ。こっちの質問には答えねえ癖に……面の皮厚いなー。

 まっ。オメエの心配も分からんでもない……安心しな。

 ここはブランチの一つだ。他の組織とも連絡取り合ってるが、うちの規模位のブランチでも、あと五十は下らねえさ」


「そうなんだ。それを聞いて、ちょっと安心しました」

「そりゃよかった。

 そんじゃ、オメエも早く秘密バラシて、俺を安心させてくれや」

「あ……それは……ごめんなさい……」


「ふっ。まあ俺も、ここにいる奴らも、ほとんどワケ有りだけどな」

 そう言いながらアルマンは、笑いながら牢の前から立ち去った。




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