ハナブサ中尉の危機一髪

暗黒星雲

第1話 困った妹と危機一髪

 俺は俺は連合宇宙軍空母機動部隊のパイロット、はなぶさヒカル。階級は中尉だ。雷撃機の腹に大型の救助ポットを抱え、遭難者の救助に当たる特務部隊〝ほまれ〟に所属している。


 三日前、我が艦隊が出所不明な救助信号を受信した。俺はその救助の先遣として派遣され、ワープカタパルトで発進した。ワープ空間で出会った少女、ルー・リーオルは一億年前に滅びた先史文明の人類であり、現在は意識体として七次元宇宙で暮らしていた。


 彼女は三次元空間での生活を望んでおり、何故だか知らないが俺の妹となった。そして不思議な事に、戸籍上は俺の妹として存在していた。俺は焦って親に連絡を取ったのだが、両親とも俺が小さい頃から可愛がっていたと証言したのだ。


 先史文明の意識体は時間を遡って戸籍などの情報と個人の記憶を改ざんできるらしい。そして、この空母艦内において家族の同居が認められるという奇天烈な決定までなされた。


 何年かに一度は艦内が一般公開されるイベントはある。その時、家族であれば優先的に招待されるのは当然なのだが、任務航海中の空母だぞ。そんなアホな事があってたまるか!


「ねえお兄ちゃん。一緒にお風呂入っちゃう? 一緒にご飯食べる? それとも、私を食べちゃう?」


 自室に戻った俺に抱き付いて来たルーの台詞だ。こんな新婚コメディな台詞を何処で覚えたんだ?


「ねえねえ。このスクール水着は、似合ってる? ほら、胸元にひらがなで名前を書いてもらったんだよ?」


 ルーは紺色のスクール水着を着ていた。青い髪で白人のような白い肌。青い瞳。容姿は日本人離れしていて、とても俺の妹には見えない。そして彼女は中学一年生くらいの小柄な体形で貧乳……。よくあるロリ系の妹そのまんまだ。そして水着の胸には白い布が縫い付けてありしっかりと名が書かれていた。『はなぶさるり』と。


「それは……誰に書いてもらったんだ?」

「艦長さん。夷守ひなもりいつき艦長です」


 アレか。あの女狐がルーの艦内滞在を認めた。ややつり上がったきつい目元だが細面な美形。そして引き締まった体をしていて胸元は豊か。大概の男はあのスタイルに悩殺されるだろう。俺もその中の一人だったりする。


「あれ? お兄ちゃんは夷守ひなもり艦長の事が好きなん? 艦長の名前出した途端に目の色が変わったよ?」

「好きとかじゃない。まあ、誰もが認める美女だってこと」

「美女が好きなんでしょ? 夷守艦長は美女だもんね。ふんだ」

「拗ねたのか?」

「そんなんじゃないもん」

「胸に劣等感があるんだろ?」

「このおおおお。乙女のコンプレックスをほじくるな!」


 突然激昂したルーに押し倒された。俺の腹の上で馬乗りになっているルーはニヤリと笑った後、スクール水着の肩の部分を掴んで引き下ろした。


 白い肌とほんの少しだけ膨らんでいる胸が露わになり、その胸の頂でピンク色の乳首がかすかに震えていた。


「何のつもりだ?」

「ヤッちゃう。既成事実を作った方が勝つのよ」

「何処でそんなアホな事を覚えたんだ!」

「お兄ちゃんの本棚!」


 俺の書籍アルバムの中か……こいつ、勝手に覗きやがったな。


「ねえ、お兄ちゃん。いいでしょ。絶対、溜まってるよね。艦隊勤務だとヤル機会って無いんでしょ。だったらめっちゃ溜まってるよね。ルーと気持ちいい事しよ。そんでもってスッキリしよ。ねっ!」


 ルーは俺の上着のファスナーを降ろす。そして露わになった俺の首筋にキスしてきた。ルーは本気なのか? 本気で俺とヤルつもりなのか? こいつの見た目は中学生で、戸籍上も14歳になったばかりなんだぞ?


「英中尉。入るぞ」


 突然の侵入者は夷守艦長だった。艦長だからってマスターキーを勝手に使うんじゃない。


「ほほう。これはこれは。邪魔だったかな?」

「チッ! 今日はここまでよ」


 ぎりりと歯ぎしりしながらルーは脇のトイレへと消えた。


「クククッ。これは傑作だなあ」

「何が傑作なんですか?」

「いやな。瑠璃るりが質問して来たのだよ。男を悩殺するにはどの服が効果的かとな」

「それでスクール水着を?」

「そうだ。私が与えた。もちろん、胸元のネームも私が書いてやったのだ。喜べ」


 コイツの入れ知恵だったのか。


「ああ、そうそう。今日の夕食は私が奢る。るりと一緒に艦長室に来い。1900だ」


 ケラケラと笑いながら部屋から出て行く艦長。この女狐め……あんたの思い通りにはさせないと心に誓いつつも、ヤバイ状況……まさに危機一髪な状況から救ってくれた事には感謝してしまう俺であった。


【続く】

 

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