卒業生代表

 答辞をしたためたはずの、じゃばら折りの奉書紙を開いたら、そこには一文もなかった。白紙だった。

 かの有名な小説のくだりではない。完璧なわたくしのミスだ。

 一瞬、頭の中も白紙になったが、わたくしは演劇部部長だった。

 シナリオ答辞は完璧に頭に入っている。アドリブ即興も得意よ。


「——厳しい寒さが続いた冬も終わり、暖かい日の光が降り注ぐ今日、私たちは卒業の日を迎えました」


 世界は、これからも、わたくし、月雪つきゆきややの舞台なのですわ。

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