恋のロングシュート

 卒業式のあと、誰もいない体育館に上加世田かみかせだ智明ともあき大豆生田おいまにゅうだ豊子とよこを呼び出した。


「このロングシュート決まったら、オレと付き合ってよ」

 上加世田かみかせだはバスケットボールを人差し指の上で、くるんと回した。

 キャットウォークから突き出したゴールに向かって、かるくドリブル。きゅっと、室内履きが鳴る。一世一代のシュートを決めてみせるさ。

 そのシュート体勢を、大豆生田おいまにゅうだは見逃さなかった。躊躇ちゅうちょせずに、間合いを詰めた。

 彼女は書道部だ。だが、そのディフェンスはバスケットボール部の、このオレのオフェンスをしのいだ。


 オレのボールは放物線を描くこともなく体育館の床に、てんてんと転がって行った。


「さよなら。上加世田かみかせだ君」 






          〈そつぎょうだ

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卒業式 それなりに危機一髪! ミコト楚良 @mm_sora_mm

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