好きまでの距離3 Side 赤松太陽
入場口を抜けると、そこは蒼の世界だった。
下からライトアップされた大きな水槽は、小さな魚も大きな魚も無く、そこが自分のテリトリーと言わないばかりに自由に……そして美しくて……。
ふと、横を見ると隣には柚子さんがいて、嬉しそうな笑顔をしていて……。
「ねぇ、太陽君、見てカクレクマノミだよ!!ほら、アニメ映画に出てた魚!!オレンジがキレイだよ!!」
「あっ!!ローズフレームグラス・エンゼルだ!!キレイ〜!!」
最初の水槽は熱帯魚の水槽らしくて、家のアクアリウムで熱帯魚を飼っている柚子さんにとっては凄く嬉しい様だ。
目がキラキラしていて、嬉しそうに赤や黄色の熱帯魚をスマホで撮っている。
僕は、熱帯魚と柚子さんの、どちらを見れば良いんだろうと訳の分からない事を考えていて……少しは落ち着けよ!!と自分の頭を軽く叩いてカツを入れた。
だって、本当にキレイだったんだから……。
熱帯魚を撮る柚子さんは本当に嬉しそうで、
「柚子さん、もし良かったらだけど、その魚と一緒の所、撮ろうか?」
本当は僕も入って一緒に、なんて恥ずかしくて言えないけど。
「うん!!」そんな笑顔もとても素敵で……。
カシャという音がして写真が取れる。嬉しそうな柚子さんの笑顔。
水の蒼さと、オレンジの熱帯魚にサンゴの赤。微笑む柚子さん。
ほのかな蒼と赤とオレンジとまるで星空の様で……。
「凄い……流石、天文部だね?写真上手いな~……うわぁ、これキレイ」撮った写真を確認していると、いつの間にか肩越しに覗き込んでいた柚子さんがいて……。いて?
「うわっ」小さく驚くと、柚子さんも今気づいた様で、
「ごっゴメンね!!どういう風に取れたか気になって!!」
それは、写真を取られたら気になるのは当たり前だよな。
近づいた位で驚いてる僕が悪い。
「こっちこそ、ゴメン!!急だったからビックリしちゃって」慌てて謝ると、
「ううん、急に覗き込んだ私が!!」「いや、僕の方が」「今のは私が……」「いやいや僕が」二人で、謝り合って一体、何をやってるんだろ?
急に可笑しくなってプッと吹き出すと、柚子さんもクスリと笑って……。
最後には、二人で笑って……。
「何やってるんだろうね僕ら」「本当ね」そう言って更に笑う。
「ねぇ、太陽君。さっき撮ったの見せてもらって良い?」柚子さんが笑顔で話しかけてくれたから、僕はコクリと笑って「一緒に見ようか?」と誘うと、「うん」と笑顔で言ってくれた。
二人で取った画像を見ながら、『二人で写真撮らない?』って言う言葉を僕は言えずにいて……。
多分なんだけど、柚子さんも、さっきから「太陽君、あのね?……えっと、ゴメン何でも無い」って言葉を何度もくり返して言っているから、本当は、きっと一緒に撮りたいのかな?なんて思ってはいるんだけど、間違ってたら恥ずかしいな、なんて何となく言い出せなくて……。
そんな事をしばらく続けていると僕らの方に一人の男の人が近づいて来た。
「ねぇ、君達」と話し掛けられた。
話し掛けて来たのは、身長も百八十センチある僕と同じ位の身長で、顔も男の僕から見ても分かる位に格好が良いお兄さん。
慌てた僕は「なっ、何でしょうか?」つい返事がどもってしまった。
「あの〜、もし良かったらで良いんだけど、俺と彼女、このスマホで撮ってくれないかな?」
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