やがて僕らは歩み寄る ☆星空とアクアリウム☆

まちゅ~@英雄属性

僕らは近づいていく1 Side 赤松太陽

 放課後の図書室、人影は少なく足音も聞こえない。


 初めての図書委員で受付の席に座る僕、赤松太陽あかまつたいようは少し緊張していたけど、静かな図書室は拍子抜けするくらい人はいない。


 小さく、ため息をつく。


 高一の十月、前任者つまり前の図書委員が急な転校で後ろの席の僕が図書委員をやる事になってしまった。


 担任の有無を言わせぬ一言で決まってしまったけれど、放課後の貴重な時間を潰されるのは、ちょっとキツイ。


 まぁ、かと言ってやる事なんて、本を読んだりスマホを見たりするだけだけど。


 僕は、人見知りだからな……。


「赤松君、緊張してる?」僕の隣の図書受付席から僕を呼ぶ優しい声に顔を向ける。


 少しくせ毛の髪を後で束ねてる女の子で僕のクラスの同級生であり、もう一人の図書委員、白波柚子しらなみゆずさんだ。


 厚い眼鏡をしていて、ちょっとニキビが特徴の悪く言えばクラスでは目立たないタイプ。


 だけど、さっき隣から見て気付いてしまった。


 彼女のくせ毛と眼鏡の隙間から見える瞳、鼻筋、柔らかそうな唇、思った以上に彼女はキレイだ。


 正直、びっくりして二度見をしてしまった。


 でも、いつも俯きがちな顔からはあまり見える事はほとんど無いだろうし、多分彼女の本当の魅力に気付いている人なんてほとんど、いないのでは無いだろうか?

 驚いた顔をして、彼女から不思議そうな顔をされてしまった。

「ゴメンね!!急に話しかけちゃって」


「いやいやいや、大丈夫、何でもないよ」

 まずいな、白波さんが可愛くてびっくりしたなんて、とても言えない。


 少し、慌てながら返事をする。

「うん少し、でもこんなに静かだと逆に緊張するよね」


 今現在、図書室には僕と白波さんの二人しかいない。


 君と二人きりだから、余計に緊張するよ、なんて言えばもっと仲良く慣れるのだろうか?


 駄目だな、こんな人見知りの僕に、気の利いた言葉なんて言えるはずが無い。


 頭の中では、いくらでも言えるのに……。


「何時も、こんな感じなの?」

 必死に言葉を振り絞る。

 白波さんは、残念そうに笑って、

「うん、何時もこんな感じかな。来て二〜三人、テスト週間になるとテスト勉強の為に結構来るけど」


「じゃあ、誰も来ない時は、どうしてたの?」

 白波さんは、少し考え込んで、

「宿題をしたり、本を読んだり……ちょっと居眠りしちゃったり」

「それは……大変そうだね」

「私は本が好きだから、平気」白波さんは何故か照れ臭そうに笑う。

「もう一人の図書委員も、そんな感じだったの?」

 転校してしまった、今はいない図書委員さんを思う。


 あまり関わりが無かったから、あまり顔も覚えていない。確か男子だったはずだけど。

「それは……」

 言い淀む彼女を不思議な顔をしていると、

「最初に一度来たきりで、バイトあるし人来ないから良いよね?って……それきり」


 じゃあ、白波さんは今まで、ずっと一人で図書委員をしていたのか?


「ちょっと!!それ酷く無い!?」


 自分でも驚く位大きな声が出た。

 白波さんが慌てて「シーッ」と言って自分の口元に人差し指をおいて、言って大声を出さないでと、ジェスチャーする。


 そうだ、ここは図書室だった。それにしても酷い、図書委員を白波さん一人に押し付けるなんて!!

 大きな声を出して恥ずかしがっている僕に、白波さんは別に平気と言うように小さく微笑んだ。


 僕は、頭を掻きながら、小さく「ゴメンね」と謝った。


 僕らは二人、声を出さずに笑い合う。


 どうせ、ここには僕達だけしかいないのに。


 その後、お互いの事を少しだけ話して、自己紹介をした。


 お互いに相手の事は何も知らなかったけど、少しだけ歩みよれた気がした。











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