デバフを探して三千里~すでに最強の男が目指す最弱~
ラッセルリッツ・リツ
【1-1】覇王レインは自室に籠ってタモリをミスドる
ドーナツを片手にテレビに映るタモリに「へへッ」と無表情のどこにでもいる男はソファに座り、その窓を飛び出して映ったのは、それはそれは自然豊かな森の中の大きなお城でした。
「今日のゲストの狩野ピン孝、やっぱりおもしろいな」
ポリポリと完食されたドーナツホールの破片はソファを跳ねると消えると、男はミスターなリングを今度は掴んで口へ運びました。
「あれ? 口がない?」
「いえ、取っただけですが」
その声に首を曲げると七日目くらいで飽きた巨乳の美少女メイドが「むむっ」と男を睨んでおります。対して男はその様子を無視してまた髭箱に手を突っ込みますが、その手は掴むところがなく、代わりに耳で「むしゃむしゃ」と弄られるドーナツの悲鳴が聞こえてきました。
「アンリ、窓をいつも締めろと言っているはずだ」
「いいえ、ご主人様、猫耳の彼女は貴方の雇ったメイドの一人です」
「そうですじょ! ごしゅじんじゃま!」
男はやはり金持ちなのでドーナツの一個や二個は許すことができる器のはずですが、今男がかぶりついているのはその猫耳である。
さすがに猫耳の美少女は気の毒に思ったのでしょうか、実のところ猫耳メイドには髭だけでなく鈴とポッケもついているため、そこからドーナツを出して見せました。
そして――――――――男の目の前でもう一箱を平らげました。それはそれは魔族の将軍が主人公の恋人を目の前で犯して見せるがごとく、見せしめの様に。
さすがの男もこれには激怒。その耳を食い千切り、ハムに巻いて喰らいました。
ただ猫耳はそれほど悲しんでもなく、妙妙といつものアホ面で生えてきたばかりの耳を掻いてました。
「はぁ、やっぱり……きゃんゆーの耳は堪らねえな」
「ご主人様、一日二耳までですよ」
「わかってるって」
どうやら猫耳メイド、きゃんゆーの耳はあっち系の薬と似ている効果があるようです。
ちなみに男によって人体改造されましたので、取り放題でもありますが、さすがに人道的に大量生産と売買はしていないようです。
はい、これで夜には私の家に猫阿耳がとど――――げふん、ごほん。ちなみに今の時刻は昼ですが、タモリでわかるのはすごいですね。
さて、男とメイド二人が戯れている間に部屋が徹子し始めたので、ドタバタと廊下が鳴り響いて迫ってきました。
「ボブ! 今日はどこに連れていってくださるのですか!」
やってまいりましたのは隣国のお姫様。ポニーテイルが可愛らしい、これまた美少女です。
蹴り破られた扉の破片が鼻の穴に入った男の面はまぁひどいもので、蹄鉄を付けたら「ヒヒーン」と吠えだしそうです。
「ボブじゃねえよ……」
「あれ? 名前なんでしたっけ? まぁどうでもいいですわね! それよりも今日はどこに行きますか! この前の博多は最高でしたわね! 今日はパラグアイに――――」
「ボブじゃねえよ!」
その叫びとともにテレビの中のドタキャンされた不機嫌なおばさまは真っ黒に閉じられました。
男は不機嫌なまま指を鳴らし、きゃんゆーの持ってきた革ジャンではないので窓の外にぶん投げ、アンリの持ってきた王様風の豪華なローブを羽織りました。
そして凛々しい顔つきをすると例の決めポーズをしながら、
「俺の名はレイン。覇王レインっだ!……あれ? いない」
「パラグアイ楽しみですわ。何の料理があるのでしょう!」
「アルボンディガス、トマトと肉団子のスープがあるみたいです」
「へぇ~なんかブルボンみたいな名前じぇすね」
「ブルボンって全然似てねえし!」
すでにメイド二人とお姫様、いつの間にか合流していた金髪美女戦士は廊下を歩いていました。
男はこの物語の主人公、この異世界を征服した覇王であるというのに、この扱いである。
そんな主人公レインを哀れに思ったのか。忍者メルクイは天井をひっくり返して、その肩を優しく叩きました。
「……今日はピンクか」
「!?」
優しさは時に厳しく愛する主人を地面に突き刺してしまうものです。されど、主人はその眼福ゆえに、さらに静かに驚き頬を赤らめた忍者系女子の可愛さに、機嫌は上向きになったようです。なので不思議な自力で地面から抜けました。
「ご主人様、早くしないと置いて行きますよ」
「ああ、ごめんごめん」
「あと、なんで前屈みなんですか?」
「アア、ゴメンゴメン」
さて今日も、覇王レインは従える美女五人とともに、ゲートのほうへ向かいました。
――あとがきーー
えーこの小説を書きやがった主の供述は「勢いでやりました。悔いはないです、続きも書けたら書くかもしれなくもなくもないので見てくれたら嬉しいです」とまったく反省の色はないようです。
デバフを探して三千里~すでに最強の男が目指す最弱~ ラッセルリッツ・リツ @ritu7869
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