2月13日 Valentine's Day Special 1
Side A
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「ねえ明日空いてたりしないの?」
お風呂から上がったらそんなLineが突然ぴょこんとやってきてたのはバレンタインの前の火曜日の夜のことだった。
送り主はなんだか妙に気が合ってたまに無駄話をするようになった同じゼミのひとで、何回か一緒に帰るうちに全く気がないかと言えば嘘になるような関係性になっていた。
恋愛談義もたまにするけど、陰でそのルックスが称賛されているのを聞いたことがある割には恋人がいたことはないらしいとの本人談も聞いていた。
「ほんとに悪いんだけど大学ない時は水曜に丸一日バイト入れちゃってて…」
要件がなんだかはうっすらわかったような気がしたので、絶対もったいないことしてるなという自覚はあった。
よっぽどバックレたいけど自分からシフト増やしてくれと頼んじゃった以上どうしようもないのだ。ごめん。
なのでもう一通付け足しておく。
これで「ならいいや」とか言われたらなんだか嫌なので文面とかは慎重になったつもり。
「明後日の木曜日なら合わせられますのでそれではだめでしょうか」
どうでもいい話の時は返信が早くて、だけどほんとにマジで超どうでもいい話の時は返事が遅いここの個チャではほとんど起こらない大事そうな話に適切な返答のタイミングはつかめなくて、でもきっと向こうははやく知りたがっているはずなので小一時間逡巡してから送信すると、珍しくその日のうちに「おっけ。じゃあ木曜のお昼前に武蔵境の駅とかは?」と返ってきたので「11時ころ以降なら大丈夫」とだけ送ってからスマホを置いて布団に入った。
なんだかわくわくしてきたけど早く寝ないと明日と明後日に響くからな。
眠れるわけないじゃん。
目が冴えまくって無理くり閉じても全然意識が遠のいていかない。
しょうがないので睡眠導入にかけたボロディンの中央アジアの平原が終わっても全然だめだったので、いっそのことなにかしようと思ってのっそり起き上がった。
時計を見ると2時半で、うわあと思いながらとりあえずお茶でも飲もうと思って冷蔵庫を開けると、先週おばあちゃんからもらった自家製のりんごジャムが目に入った。
そうか、こっちからもあげたって別にいいはずだ。
そう思って確かあったはずの冷凍のパイシートを探すと、冷凍庫の下にやっぱり埋もれていたので、眠れない夜にはいい時間つぶしかもなと思った。
絶対明日バイト中に眠くなるけど。
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