【頑張ッテ下サイ】

頑張ッテ下サイ

　ト或ル出版社ノ方ヨリ、一本ノ電話ヲ頂イタ。

　其ノ方ハ、私ノ書イタ物語ヲ読ンデ、感想ヲ下サッタ。迚（とても）真摯ニ、「作家ニナリタイ」ト云ウ夢ヲ決シテ笑ワズ、「頑張ッテ下サイ」ト、私ニ云ッテ下サッタ。

　此ノ一言ガ唯々、嬉シカッタ。有難カッタ。

　当時、私ハ小説ノ公募ニ何度カ続ケテ脱落シ、少々気ガ滅入ッテイタ。イヤ、正直云ッテ相当滅入ッテイタ。一歩々々ト私ハ崖ノ方ヘト後退シ、現実ニ追イ詰メラレ、焦ッテイタノダ。「自分ノ小説ハツマラヌノデハナイカ」ト云ウ考エサエモガ、脳裏ヲヨギッタ。大変恐ロシカッタ。

　悩マシイコトニ、私ノ心ヲ守ル盾ハ雲母ノヨウニ脆ク、弱イノダ。

　ダガ、今ハモウ違ウ。頑張ラナケレバ。苦悩ニ負ケズ、諦メズ、不器用デモ構ワナイ、不器用ナラバ不器用ナリニ、頑張ラナケレバ！

　彼ノ人ノ言葉ハ、私ヲ此ノ夢ニ今モ尚、生カシテクレタ。「諦メナイデクレ」ト、云ッテクレタ。

　私ハ今モ尚、公募ヘト絶エズ挑ミ続ケテイル。小説、随筆、詩、俳句、日記、如何ナルモノデアレ、挑メルモノニハ挑ム、ソウ決メテイルノダ。

　文筆ヲ生業トスルコトガデキル、其ノ日ガ来ルコトヲ、唯盲目ニ信ジテ。