第103話 トラブルは突然に
ゴーテル鉱山の一件が落ち着いてからは再び平穏な駐在所生活に戻った。
ちなみに、しばらく共同生活することになったアミーラを村の近くにある湖で暮らすドラゴンのアスレティカにも紹介しておく。
最初は驚いていたアミーラであったが、持ち前の人懐っこさですぐに打ち解けた。アスレティカも小さな魔法使いに興味津々のようで、暇を見つけては湖を訪れるアミーラを歓迎しているようだ。
俺はというと、ゴーテル鉱山の件が終わってからは特に大きい事件もなく、農場の手入れをしたり鶏たちの世話をしたり、時々モンスターが潜んでいないかと近くの森をエリナと一緒にパトロールしたりと穏やかながらもそれなりに忙しい毎日を送っていた。
そんなある日――村にひとりの男がやってくる。
村に人が来るというのは……まあ、珍しいといえば珍しいんだけど、別段警戒をするようなものではない。見るからに悪党だってオーラを放っているヤツならまだしも、やってきたのは行商人とのことだった。
村人たちからの評判も上々なようなので特に警戒をしていなかったが、どうも彼は俺に用事があるらしく、ガナン村長に案内されて駐在所を訪れた。
「あなたが地方勤務の聖騎士様ですか!」
「そ、そうですが」
妙な肩書が定着しているっぽいな。
とにかく俺と話がしたいとやってきたのは二十代そこそこの青年商人で、名前はアレックスというらしい。
彼は商業都市グラッセラからやってきたという。
「グラッセラ、か……」
あそことはちょっとした因縁があった。
とはいえ、もうとっくに解決しているので今さらどうこうするつもりもないが。
クラン村が長年世話になっていたドレスロー商会を押しのけ、違法行為にまで手を染めていたエイゲンバーグ商会のせいでめちゃくちゃになりかけたんだよな。
結局、連中は騎士団によってしょっ引かれ、俺もその手伝いをちょっとだけやった。
あれ以来、グラッセラには買い物で何度か訪れたけど……そこから来た行商人のアレックス青年が、俺に何の用があるというんだ?
「実は……グラッセラは今少々もめていまして」
「もめている?」
「カーティス村の駐在所に勤めているあなたにこのようなお願いをするのは間違っていると重々承知の上ですが、もう僕たちが頼れるのはあなたしかいないのです!」
話を終える前に土下座をするアレックス。
説明不足すぎて事態はまったく飲み込めないが……とりあえず、グラッセラに異常事態が発生しているということだけは伝わった。
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