第101話 聖騎士への道
ムカデ型モンスターは難なく倒すことができた。
ドイル様にもアリッサ様にも怪我はなく、魔鉱石への悪影響もなし。念のため、アミーラは決壊魔法をより強固なものとし、これ以上のモンスター侵入を防ごうと対策を講じた。
ともかく、これで一件落着――とはいきそうにもないな。
まだひとつ問題が残されている。
「落ち着いたか、ラターシャ」
「……ありがとうございます、先輩」
もうひとりの後輩であるラターシャのメンタル面だった。
俺と同じ聖騎士の称号を目指す彼女にとって、今回の失態はこれまで築いてきた実績を台無しにしてしまう恐れもあるとひどく落胆していた。
思えば、俺の後輩として配属された時から、ラターシャは上昇志向が強かったな。
昔は「自分も強くなりたい」という純粋な気持ちで腕を磨いていたが、それがいつしか「もっと出世したい」に目的が変わってしまったのだろう。本来の任務を全うするならモンスターへ単身突っ込んでいくのではなく、護衛対象であるアリッサ様の近くを離れずに逃がす策を取るほうが先決だ。
しかし、ここで大型のモンスターを討伐したという実績を積めば、さらに聖騎士の座に近づくと考えたのだろう。
聖騎士とはいえ、向かってくる敵を全員なぎ倒す必要はないのだ。
求められるのは――【勝利】。
だが、勝利にもいろんな種類がある。
今回でいう勝利はモンスターからドイル様とアリッサ様を守ること。これが何より優先されなければいけない事項であった。ラターシャはそれを見誤り、挙句モンスターにやられるかもしれないというところまで追いつめられたのだ。
「聖騎士を目指すなんて……我ながら聞いて呆れますね」
ラターシャはすっかり自信を失くしている。
なんとか元気づけてやりたいが、同声をかけてよりやら……と、その時、
「ラターシャ」
落ち込む彼女に声をかけたのはアリッサ様だった。
「っ!? ア、アリッサ様!?」
思わず顔が引きつるラターシャ。
今回の失敗を咎められる――そう思っていたのだろうが、アリッサ様が取った行動はそんな彼女の思考とはまったく異なるものであった。
「あなたが無事でよかったです」
そう言って、アリッサ様はラターシャを抱きしめる。
「ア、アア、アリッサしゃま!?」
同様のあまり声が裏返ってしまうラターシャであったが、すぐにアリッサ様が本気で自分の安否を気にかけていたと分かり、「申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉を述べる。
なんだかんだ言って、きちんと信頼関係は築けているようだな。
こうして、トラブルはあったものの鉱山デート――いや、鉱山視察は無事終了。
ゴーテル鉱山復活の日が大きく近づいたのだった。
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