第91話 いち段落

 新たな鉱脈調査はこれにて無事終了となった。

 成果としては――想定以上の大成功と言えるだろう。

 期待はしていたが、まさかこれほどうまくいくとは思ってもみなかったよ。


 坑道から外へ出ると、すでに夕方となっていた。一刻も早くトライオン家の屋敷へこの成功を報告したいところではあるが、道中の危険性を考慮して明日の朝一にここを発つべきだろうという結論に至る。


 なので、本日は廃村にテントを設営して過ごすこととなった。


「この村にもまた活気が戻ってきますね」

「そうだな。あれだけの魔鉱石を採掘するとなったら時間もかかるだろうし、アミーラの調査結果ではまだ先にたくさん反応があるらしいからな」


 今回大活躍だったアミーラはここへ来て疲れがでたようで、今話し合っていたエリナに膝枕をしてもらいながら眠っている。


「まだこんなに小さいのに……頑張ってくれましたね」

「ああ。彼女の活躍がなければ、魔鉱山の新しい鉱脈はずっと放置されたままだったよ」


 この新たな発見で、ランドバル王国には大きな経済効果が見込まれるだろう。もちろん、この山を所有しているトライオン家にだって恩恵はある。


「……ここでの成果が認められたら、ドイル様はもっと自然にアリッサ様と会えるのだろうけどな」

「その点については問題ないのでは? おふたりの様子を眺めていると相思相愛なのは間違いなし! たとえ貴族としての位が違いすぎたとしても結ばれるはずです!」

「なぜそう言い切れる?」

「女の勘ですよ!」

「な、なるほど……」


 信憑性についてはこの際目をつむるとして……まあ、あのふたりがお似合いで互いを想い合っている節があるというのは大体の人が気づいているだろうな。出会い方もなかなかドラマティックだったし。


 あと、これは個人的な見解だが、公爵家であるマクリード家の当主様はあんまり地位とか気にしなさそうなタイプだった。むしろドイル様の方が遠慮しているようにも見え、この辺がどうにも歯がゆい。


 一般平民とは違い、自由恋愛が許される立場じゃないというのは重々承知しているが、あのふたりならそこまで互いの地位に差があるわけじゃないので、あとは当人同士の気持ち次第ってところなのかもな。


「おーい! まったりしているところ悪いが、テント設営を手伝ってくれ!」


 ゲイリーに呼ばれ、俺は腰をあげた。


「すまない、今行くよ」

「あっ、なら私も――」

「いや、アミーラを起こすのは悪いからそのままでいてくれ。その分、俺がふたり分働いてくるから」

「先輩……」


 アミーラを気にかけているが、エリナ自身も結構疲れているだろうからな。

 それに……本格的に忙しくなるのはこれからだ。

 まず朝一でトライオン家に戻らなくちゃいけないしな。

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