第90話 宝の山
ついにたどり着いた魔鉱石の鉱脈。
溢れんばかりのお宝があちこちに……目に見えるだけでこれほどの量があるのだから、採掘すると一体どれほどになるのか、まったく想像できない。
「こいつは驚いたな。まさかここまでの規模の鉱脈が長年にわたって放置され続けていたなんて……」
「魔法の進歩には頭が下がりますね」
ゲイリーもエリナも想像を絶する魔鉱石の量に驚きを隠せない様子。
規模もそうだが、旧坑道からそれほど離れていない場所にあるというのもこちらとしては好都合だった。新しい道を作るとなると大変だが、これなら過去の坑道を再利用できる。トロッコのレールも同じように再利用できるだろう。
まあ、何より、
「ドイル様にはいい報告ができるな」
これが一番だよな。
産業的に苦しい立場にあるアボット地方に差し込んだ一筋の光。
それは周囲を埋め尽くす魔鉱石に匹敵するほど強い輝きを持った光――まさにこの地の未来を照らしているようだ。
みんなが浮かれている中、俺は今回一番の功労者であるアミーラに礼を述べる。
「ありがとう、アミーラ。君のおかげでアボット地方はきっと生まれ変わる」
「そ、そんな……私はただ自分のやれることをやっただけですよ」
「だが、君のその力でたくさんの人が救われるんだ。感謝しているよ」
「えへへ~」
照れ笑いを浮かべるアミーラ。
こういったリアクションは年相応だな。
「さて、これからどうする?」
アミーラとの話が終わった後、そう尋ねてきたのはゲイリーだった。一応、騎士団側の責任者は彼だが、このあとの対応については領地関係者である俺に委ねるという。
まあ、そうは言っても俺自身も雇われの身であるのは変わらない。
ここはやはり領主であるドイル様の意見を聞くのが正しいだろうな。
「安全を確認できたら、ドイル様に報告して直接視察をしてもらおう」
「それがいいな。そうと決まれば、騎士を何人かここへ置いていく。一応、食料やテントもあるし、一週間くらいは滞在できるだろう」
「感謝するよ、ゲイリー」
こうして、いよいよ本格的に動きだしたアボット地方の魔鉱山復活案件。
ただ、まだまだやるべきことはたくさんある。
ひとつひとつ着実にこなしていかなければな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます