第85話 魔法使いの戦い方
坑道内を縦横無尽に移動するジュエル・リザード。
天井まであがられてしまっては、剣で戦う騎士の俺たちにはどうしようもできない。本来であれば、モンスターが逃げてくれたのでこのまま終了となるはずが――俺たちにとって最悪のケースはモンスターを逃がしてしまうことになる。
あのジュエル・リザードが仲間を呼んで群れを形成したら、この魔鉱山に残っていた魔鉱石はすべて食い尽くされてしまう。その事態を防ぐためにも、ここで確実にヤツを仕留めておかなくてはいけない。
俺たちはモンスターを追いかけようとしたが、それより先にアミーラが動きだした。
「私の魔法であのモンスターを倒します!」
フンス、と鼻を鳴らしながら宣言するアミーラ。
ドヤ顔は頼もしいのだが……正直、騎士団の面々は全員不安顔だった。何せ、廃村の様子にビビりまくっていたからなぁ。
ただ、本人があれほど自信満々だと本当にやってくれそうな気がする。だいたい、すでにジュエル・リザードとの距離はかなり開いている。俺たち騎士では埋められない差だが、彼女はここからどうやってあのモンスターを倒すというのか。
「トカゲだけあって動きは俊敏ですが……これなら!」
アミーラはその小さな体に不釣り合いなほど大きな魔法の杖を器用に操っていく。やがて彼女の全身を覆う魔力は冷気を帯びてくる。
なるほど。
氷魔法を使おうってわけか。
かつて一緒に仕事をした魔法使いは、よく氷を矢の形に変えて飛ばしていた。きっとアミーラもそうする――と思っていたが、彼女の魔法は一般的な魔法使いの扱うそれとはスケールがまるで違った。
「氷漬けにしちゃいます!」
「「「「「えっ?」」」」」
俺とゲイリーとエリナ、そして多くの騎士たちがアミーラの言葉の意味を理解できずに思わず間の抜けた声をだしてしまう。
直後、彼女の周辺の景色が一変した。
なんと、坑道の壁がどんどん凍りついていったのだ。
アミーラのいった氷漬けとは……逃げる敵だけでなく、この坑道全体に及ぶものだった。
その氷は遥か先を移動するジュエル・リザードを捉える。一瞬にして氷漬けとなり、天井から剥がれ落ちて地面に叩きつけられると粉々に砕け散った。
「な、なんて規模の魔法を使うんだ……」
「王立学園の学生たちよりずっと幼いあの子が……」
「さ、さすがはグラバーソン家の魔法使い……」
呆気にとられる俺とエリナとゲイリー。
ここへ来てようやく気づく。
あの子は……正真正銘、凄腕の魔法使いだ。
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【この男’s(メンズ)の絆が尊い! 異世界小説コンテスト】に参加するため新作を投稿しました。
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