第74話 小さな来訪者
駐在騎士である俺が守るのはカーティス村の人々だが、困っている人――特にパーカーと同じくらいの年齢をした幼い子どもが相手なら手を差し伸べる必要があるだろう。
「やあ、こんにちは。どこかへお出かけかい?」
「っ!」
優しく声をかけたつもりだったが、彼女は驚いてしまったようでビクッと体が跳ね上がってしまう。それからツインテールにまとめた紫色の長い髪と大きな緑色の瞳は、ずっと忙しなく小刻みに揺れていた。……どう見ても怖がっているな。
「安心してくれ。俺はこの村の駐在所に勤める騎士だ。何かを探しているようだったんで声をかけたんだが……この村へは何をしに?」
「あっ、え、えっとぉ」
恥ずかしがり屋でもあるらしく、モジモジと体を揺らしながら必死に言葉を紡いでいく。
「な、仲間を探しに来たんです……」
「仲間?」
女の子が口にした表現に、俺は違和感を覚えた。
どうやら人を捜しているらしいが、それなら「友だち」とか「知り合い」って言い方をしそうなものだ。「仲間」というと、たとえば冒険者パーティーとか俺たちが所属する騎士団のメンバーとか、そんな印象を受ける。
まあ、子どもだからその辺の言い回しが曖昧になってしまうというのはあり得るけど、なんだか妙な感じがするんだよな。
……もう少し探りを入れてみるか。
「君の名前は?」
「ア、アミーラです」
「どこに住んでいるんだい?」
「ラ、ランドバル王都です」
「ご両親は一緒じゃないのかい?」
「は、はい」
おどおどしながらも質問にはしっかり答えていくアミーラ。次第に緊張もほぐれていったのか、話し方に落ち着きが見え始めた。連れてきたパーカーが「大丈夫だよ」と声をかけてくれたのも好影響を与えているようだ。
それにしても……やはり違和感を拭えない。
彼女はどこからどう見ても幼い女の子――のはずだが、なんだか遥か年上の女性と話をしている気分になってくる。声色も細かな仕草も年相応という感じなのに、なぜ俺はこうもこの子を疑ってしまうんだ?
もしかしたら、アミーラが捜しているという人物が関係しているのかもしれない。そう思った俺その人の名前を尋ねてみた――すると、
「私はジャスティン・フォイルという騎士を捜しているんです」
「えっ?」
なんと、アミーラが捜していたのは俺だった。
……なんだか、猛烈に嫌な予感がしてきたぞ。
「ま、まさか……」
このタイミングで俺を訪ねてきた、会ったことのない人物。
可能性があるとすれば――マクリード家から派遣された「凄腕の魔法使い」くらいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます