第64話 魔鉱石

 ドノルド様がこれまでまったく付き合いのなかった辺境領主のトライオン家を舞踏会に招待した理由――俺はてっきり愛娘の誕生日会を盛大に開きたいからと、数合わせ的な意味で呼んだんじゃないかって推測していた。

 ……しかし、実際はどうも違うようだ。



 少し真面目な話をすると言って、ドイル様とアリッサ様、そして俺たちトライオン家の関係者は応接室へと通された。


「急にすまないね。本当は会場で話をしておきたかったのだが」

「いえ、こうしてお話できる機会をいただけたのです。それだけで感謝しております」


 ドイル様は落ち着いていた。舞踏会の時は平静を装っている感じもしていたが、今は堂々とした振る舞いができている。ドノルド様は臆せず、露骨に媚を売るような真似をしないこうした部分を気に入ったのかもしれないな。


 それぞれの家の関係者が向かい合う形となり、当主であるドノルド様とアリッサ様、そしてドイル様がソファへと腰かけた。ちなみに我々四人はドイル様の背後にて直立不動。少しハラハラしながら状況を見守ることに。


 まず、ドノルド様が魔鉱石の採掘が行われていたというアボット地方の歴史について語り始める。さすがに現領主のドイル様は鉱山の存在を先代から聞いていたようで、ブラーフさん同様、すでに魔鉱石が採れなくなり廃れてしまったという現状も把握していた。


 すでに鉱山としての役目を終えているのだが、ドノルド様曰く、そう判断するのは早計だというのだ。


「実は、少し前に他国にある廃鉱山で再び魔鉱石が採掘されるようになったという話題を耳にしてね」

「そ、そんなことがあるのですか!?」


 これには俺たちも顔を見合わせる。

 そっち方面の知識が豊富というわけじゃないが、少なくとも廃鉱山が復活したなんて話題は耳にした記憶がない。


「新しく魔鉱石が生まれてくるというわけではなく、これまで調べきれていなかった場所から新たに魔鉱石が発見されたという例があるという話だ。以前よりも技術が向上したことで捜索範囲も拡大できるようになったらしいからね」

「な、なるほど……その線なら可能性はありますね」


 これまでに調査できなかった場所に魔鉱石が眠っていた、か……それなら確かに可能性としてはなくはない。問題は仮にアボット地方の鉱山にまだ魔鉱石が存在していたとして、どうやってその場所を特定するかだ。

 ドノルド様の話では、近年新たに発見された方法が必要になってくるらしい。

 鉱山の中は危険だから、あちこち手当たり次第に調べて回るという手段はなるべく避けた方がいいだろうからな。いかに効率よく、そして確実に場所を特定するかが鍵になる……それを叶えられる方法とは――


「魔法だよ。魔鉱石が放つ微量な魔力をも探知できる魔法が新たに生みだされたんだ」




※18時にも投稿予定!

 週明けからは18時に1話投稿へ変更となります!

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