第51話 舞踏会へ
二週間という準備期間はあっという間にすぎていった。
その間、俺とエリナは普段通りの仕事をし、自分たちの畑や動物たちの世話もキッチリこなしていく。
最近では新しく使い魔のピータも増えたからな。本来ならベローズ副騎士団長のもとにいるはずなのだが、アボット地方の環境が気に入ったらしく頻繁にやってくる。
「いよいよ明日は舞踏会ですねぇ。準備はよろしいですか」
「こっちは問題ないが……もしかしてついてくる気か?」
「これも一応業務ですよ。ベローズ副騎士団長からあなたについていって舞踏会の様子を探るように命じられておりますので」
「ふーん」
「あっ! エリナ様! その顔は信用していませんね!」
賑やかになるのはいいが……ちょっと賑やかすぎる気もする。
ともかく、今日がとても大事な日であることには間違いない。
ハンクの動向が気にならないわけじゃないが、俺は俺の仕事をしっかりこなすまでだ。
トライオン家の屋敷からマクリード家の屋敷まではかなり距離があった。
あっちは公爵家ということもあって、王都のすぐ近くが領地になっており、対照的にこちらは遠く離れた辺境の地。前日の早朝に出て、翌日の夕方に到着予定という長い道のりとなる。
本当はもう少し早く出て余裕を持ちたかったが、諸々事情があって手早く動けなかったんだよなぁ。
とはいえ、前日から出発しても十分間に合う。
……途中で余計なトラブルがなければ。
結果的に、俺の心配は杞憂に終わった。
道中これと言って不安な場面はなく、むしろドイル様は初めての長旅を満喫しているようにさえ感じた。舞踏会という大舞台が待ち構えており、緊張でガチガチになっていてもおかしくはないのだが、そんな素振りは微塵もない。虚勢を張っているってわけでもなさそうだし、本番に強いタイプだな。
ドイル様に頼もしさを感じているうちに、目的地であるマクリード家に到着。
さすがは公爵家の屋敷だな――というのが率直な感想だった。
何より驚かされるのがそのサイズ。
こんなに大きくしてどうするんだって問いかけたいくらいだ。
屋敷内へと入り、馬車を止めてから外へ。
そのまま支度をするため用意された控室へと移動する。
当たり前の話だが、屋敷の中は大物たちで溢れかえっていた。聖騎士の称号を与えられた俺でも、ここまでの規模のパーティーで警備に当たった記憶はない。それほどまでにマクリード家はご令嬢の誕生会に気合を入れているのか。
――まあ、実際は俺やエリナが睨んだように、将来のパートナー探しというのが本命なのだろうな。
愛娘に相応しい相手を選びたい。
だから、大物たちには声をかけておいたってところか……恐らく、貴族には片っ端から招待状を送ったようだな。
「な、なんだか凄い規模ですね、先輩……」
「そうだな」
経験のあるエリナでさえ呑まれそうな空気になっている。
これは想像以上に手こずりそうだぞ。
緊張感が漂う中、
「おやおや、懐かしい顔ぶれが揃っているじゃないか」
わざとらしい大声でひとりの男が近づいてきた。
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