第47話 使い魔のピータ

 人間の言葉を話す小鳥型の使い魔ピータ。

 声色からオスだと思われるが、そんな彼は昨日からベローズ副騎士団長の使い魔になったという。


「ベローズ副騎士団長が新しい使い魔を……?」


 騎士団が使い魔を用いることは決して珍しくはない。実際、ベローズ副騎士団長は複数の使い魔を連れている。その中に新しく加わったというのがピータらしい。


「なんだって急に新しい使い魔と契約をしたんだ?」

「あなたたちとの連絡専用ですよ」

「私たちとの?」


 キョトンとした顔でピータを見つめるエリナ。

 

「連絡って……私と先輩の関係進展について逐一報告しろということでしょうか……」

「いや、普通に例の横領疑惑に関しての連絡だと思うぞ」

「ですよねー」


 エリナはまったく感情が宿っていない声で答える。

 何か怒らせるようなことを言ったかなと困惑していたら、ピータが空気を変えるように「オホン」とわざとらしい咳払いをしてから話し始める。


「先ほどエリナ様にはお話をしたのですが、今回の舞踏会が開催された理由はマクリード家ご令嬢の十六回目となる誕生日を祝うものです」

「えっ? そうなの?」


 口には出せないが……正直、拍子抜けだ。

 娘の誕生日を盛大に祝いたいという親心と、来客たちに自身のコネクションの強さを示すためにとりあえず声をかけたって魂胆が透けて見える。トライオン家はマクリード家の見栄っ張りに付き合わされる――いや、それどころか、いいように利用される格好となるのだ。


「それってつまり……人員を確保するため、手当たり次第に声をかけまくっていることですよね?」

「まあ、そう捉えるのが妥当ですかね」

「だが、会場に多くの人が集まるのならチャンスであるのに変わりはない」


 恐らく、会場に集まる人の大半がご令嬢目当てだろう。

 それもただ祝うのではなく、あわよくば自分か或いは自分の息子がご令嬢に気に入られるのを狙っているはず。公爵家のご令嬢と婚約できれば、王家とのつながりを持てるし、これ以上ない強みとなる。


「確かに、マクリード家のご令嬢であるアリッサ様のお誕生日となれば、男性陣は放っておかないでしょうね。……正直、そういう政略結婚みたいなのって好きじゃないですけど」

「私もエリナ様と同じ気持ちでございますが、こればっかりは人間社会の歪な構造が生みだした悲劇……胸が締めつけられる思いです」

「随分と小難しい話し方をする使い魔だなぁ」


 ベローズ副騎士団長の使い魔って、他はすべて戦闘補佐の役割を果たすヤツばっかりだったから、こういうタイプは珍しい。

 情報伝達を主目的とする使い魔ならばこちらの方がいいのかな。


 ともかく、俺は屋敷へ報告を入れるために再びカーティス村をあとにするのだった。

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