第11話【幕間】剣術道場師範の見解
王都内にある剣術道場。
多くの優秀な騎士を輩出したことで知られるここには多くの若者たちが腕を磨いている。
道場の師範はロレントという名で、長い白髪にたっぷり蓄えた白髭が印象的。年齢とは不釣り合いなほどに鍛え抜かれた肉体も目を引く。
そのロレントは怒りをあらわにしていた。
「納得がいかねぇな!」
鍛錬が終わり、門下生がいなくなった道場に響き渡る怒声。それを受けているのは、かつてこの道場で剣術を学び、ジャスティンを紹介したベローズ副騎士団長だった。
「お怒りはもっとも。……今回の件は私も腑に落ちない点がいくつかあります」
「だったらさっさと調べてジャスティンを連れ戻してこい。今の騎士団にはあいつのような男が必要だ」
「まったく同意見です――が、どうにも込み入った事情がありそうでしてなぁ」
「副騎士団長という立場にあるおまえでもすぐに行動できない事態なのか?」
「お恥ずかしながら」
そこで、ロレントはハッとなる。
ベローズの「副騎士団長」という肩書をもってしても簡単には覆せないとなったら、今回の背後にはそれ以上の権力が関与している可能性が高い。
だが、相手は聖騎士とはいえまだ若いジャスティンだ。そこまで権力のある人物がなぜそこまで彼にこだわるのか、ロレントには分かりかねた。
「なぜ騎士団はジャスティンにこだわる?」
「あるとすれば……私怨、ですかね」
「私怨? ヤツは誰かに恨まれるような性格ではないぞ」
「一方的な逆恨みですよ。彼は人並みの出世欲はありましたが、道を踏み外すような男じゃない……それで結果を残していましたからなぁ。面白くないと感じる者もいたでしょう」
「嘆かわしいな。腕の立つ者がいれば、それを乗り越えようと奮い立つのが騎士魂というものだろうに」
ため息交じりに呟くロレント。
その様子を見ていたベローズはバツが悪そうに俯いた。
「なんとも耳が痛い話ですな。若い騎士を正しい道へと導くのが我ら経験のある者の役目だというのに」
「まあ、いつの時代も狡猾なヤツはいる。そいつが何を狙っているのか……それを掴む必要があるな」
「えぇ。もしかしたら、これはまだ序章に過ぎないかもしれませんしね……」
そう語るベローズの眼光は鋭かった。
何かを狙っていると感じ取ったロレントは以降何も語らず。
事件の真相についてはベローズが本格的に動きだすと察したため、彼は彼で動きだそうと静かに決意するのだった。
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