必然の出会い
春、入学式。
...当日に暖かい気候とベッドのせいで遅刻してしまった。
急いで教室に向かったが誰もおらず、走って体育館の方へ行くと、そこには既に集まった在校生と、今日ここに入学する新入生たちの長蛇の列でぎゅうぎゅうになっていた。列の間は人半分位しかないうえ、好き勝手に喋っているから列がどこかわからない。すると、少し奥の方から知り合いが手を振ってくれたので、「すみません」と言いつつ眼の前の列のすき間に体と足を進めていく。ようやくついた自分の場所へと腰を下ろすと、そいつは呆れたような怒っているような顔をしていて、
「カッシー今日遅刻すんのまじ?」
といきなりばしばしと背中を遠慮なくたたかれてしまった。仕返しに睨み返すと、一瞬の沈黙の後、何が面白かったのか口を大きく開けて豪快に笑い、それが周りの目線を一瞬にして集めている。
「うるせぇぞガワ、少し静かにしてくんね?」
すると周りの視線に気づいたのか、今度はちゃんと口をつぐんだ。
その後、なぜか後ろに並んでた女子にも謝っていた。急に律儀...?
そして暫く経ったあと、15分位遅れの入学式が始まった。相変わらず校長は時間を気にせず長い祝辞を述べ、来賓の言葉が子守唄へと進化し、そろそろ眠くなってきたときだった。
「___新入生代表の挨拶、1年1組
在校生と新入生が向かい合い、その間に先生たちが急いでマイクを設置している。
それと同時に新入生が名前を呼ばれ、マイクの前へと移動していたときだった。
新入生代表がいた列の後ろにいた女子が見えた。
一部のカーテンが閉められておらず、その子と周りの人たちだけずっと眩しい光を耐えていたらしい。正面から光を浴びている今は、手で目元を覆うようにして小さくなっている。頭ら辺だけが見えていた状態で、髪はまっすぐきれいな茶髪、頭の上に寝癖がぴょんとはねていて、ほんとにひよこみたいだった。
不意にその子の姿が見えたとき、一瞬思考が止まる。
「ガワ、あの子見える?」
指を指した方向をガワじーっと見つめると、どうでも良さそうに答える。
「あぁ、あれおれの妹だよ。話したことあったっけ」
「...あったよ」
再び見るとガワの妹は不意にあくびをし、眠そうに目を擦っている。
目を疑った。
まるでガワとは似つかない、新入生なのに誰よりも派手な格好をしていたからだ。
けれど目元はガワそっくりで、あくびをするとき手を顔の前で仰ぐガワの癖も一緒だった。纏う雰囲気が全然違くて、そっくりさんなだけかと思った。
周りから拍手が起き、新入生の挨拶が終わったことに気がつく。
代表の一年が元の場所に戻ると、ガワの妹と仲よさげに喋っていた。
「...そういえば」
ガワはわざとらしく咳払いをする。
「あの新入生代表、可愛くなかったか?見に行かね?」
妹に会うついでに、と耳打ちしてくる。
こいつ、なんのつもりだ?と思ったが、ガワの妹と一回話してみたいというのもあったので、ちょっとした好奇心から提案に乗ることにしたのだった。
高2病 ひじま @hijima316
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