II
こんな生活を続けてはいけなかった。おれは限界に達していた。これ以上ウソは嫌だ! ユカタンの痛単、そしてカミングアウト、組の内部でのおれの場違いな立場の劇的な切り下げ、この一連の恐ろしくも甘美に満ちた見通しが、渾然一体となっておれを内部から駆り立てた! そして願わくばおれは……ヤスの子分となって……ユカタン・ミキタンとの2+2で夢と現実、仮象と具象を股にかける愛の一大帝国を築き上げるのだ……おお、タンジール! ヤスにならどんなにぶたれたっていい! あの決して笑うことのない冷酷なヤス、あらゆる意味において手段ではなく目的そのものであるような数少ない人間の一人であるあのヤスが、整った顔立ちに軽蔑の冷たい炎を燃え立たせ、ピカピカに磨いたブーツの先でおれの腹を踏みつけグイグイと押してくる、そうすればおれは無力なオスの真鱈のように、白子の中身をそこら中にぶちまけてしまうだろう! そう、おれはこれから塗装屋へ出かけてゆき、塗装職人とユカタン・シールのデザインを細かく打ち合わせ、発狂する! じゃなくて発注する! おれの人格のデノミ決行へ向けて、ついにカウントダウンが始まるのだ! そのとき塗装屋の職人たちは、一瞬だけその仕事の手を止めて、HAPPY BIRTHDAY TO YOU をおれのために声をそろえて歌ってくれるだろう! おれは、ついにまた生まれるのだ! ビバ、第二の誕生! ビバ、タンジール!
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