彼女にスタート委ねたら
つとむュー
第1話 プロローグ
『すごいよコレ。ビックリだよ!』
地下アイドルやってる姉貴からラインが来た。
白い腕時計の写真と共に。
『すごいって何がだよ』
すぐに俺は返信する。
『白い腕時計ってホワイトウォッチーズのアイコンだろ? 姉貴が着けるのは当たり前じゃん』
姉貴が所属しているのは『ホワイトウォッチーズ』という名前の女性三人組。
お揃いの白い腕時計がアイコンで、踊りながら歌うパフォーマンスをウリにしている。
メンバーはセンターからぷらっち、キンカ、シルフィ。ちなみにシルフィが姉貴の芸名だ。生まれつき耳の先がちょっと尖った感じで、普段から髪を緑色に染めているからそう名付けられたらしい。出典は知らんけど。
『まあ、とにかくこれ見てよ』
コメントと一緒に姉貴から送られてきたのがステージ動画。
一分ほどの長さだったが、それを再生して驚いた。
「ほぉ、これはすごい」
というのも、三人のパフォーマンスの息がピタリと合っていたからだ。
ここまでのレベルに達するまでには相当の練習を積んだに違いない。地下アイドルだからとあまり注目してなかったが、これは賞賛に値する。これほどのダンスが観れるのならチケット代を払ってもいいかもしれない。
『すごいよ、タイミングばっちりじゃん』
素直に姉貴を褒めてあげる。
決してご祝儀ではない。俺は本当に感動していた。
『でしょ?』
得意顔してそうな姉貴のコメントがなんだかちょっと悔しい。
しかしその後の姉貴のラインに俺は驚愕した。
『でもこの曲を三人で合わせたのってさ、これが初めてなんだよ』
えっ? 初めて?
いやいやいやいや、それはないでしょ!
初めての合わせで、こんなにもタイミングぴったりって絶対あり得ない。これは相当練習を積んだ後のパフォーマンスだよ。
『ウソでしょ?』
『ホントなんだってば』
『初めてでここまでできたら天才だよ』
『だから最初に書いたじゃない。すごいって、この時計』
ええっ、時計?
時計がすごいの?
三人のパフォーマンスじゃなくて?
『この時計はね、スタート同期ウォッチっていうの。スタッフさんの親戚に有名メーカー勤務の技術者がいて、特別に開発してもらったんだから』
『なに? その不思議アイテム。スタート同期ってなに?』
『スタートを合わせられるウォッチだよ。これ付けてるとね、センターのぷらっちのタイミングにぴったり合わせられるんだよ。初見でも』
マジか。
それはすごい。
一体どんな仕組みなんだろう?
そんな時計があるなら俺も使ってみたい。
その時、俺の頭にあるアイディアが閃いた。
『週末ってさ、姉貴のライブある?』
『今週はないけど』
『じゃあ、その時計ちょっと貸してよ。ぷらっちさんの時計と一緒に』
『ええっ?』
最初は渋ってきた姉貴だが、俺が必死に説得すると嫌々ながらも了承してくれた。ぷらっちさんが承諾してくれたら、という条件付きで。
こうして俺、
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