愛を語るな、大人たち

せり

愛を語るな、大人たち


「大人になれば……」

その言葉を聞いて育った子どもは、

気がつけば20代何年目になるだろうか。

とにかくわたしには愛が足りない。


幼い頃のわたしは、

大人は自由だと思っていて、

結婚して子どもに囲まれて、

きっと何でも手に入ると信じていた。


でも、なぜか、

信じていた世界はどこにもなくて、

大人たちはいがみ合っている。

わたしが目にする景色はどんどん歪んでいく。


想像していた愛は、どこにもなかった。



不倫問題で叩き叩かれる人々。

わたしが求めていた愛はそこにあるのだろうか。

ああ、あるのかもしれない。


「愛している」と叫ぶミュージシャン。

本当は、あなたは誰を想っているの?

その言葉をのせたメロディーを

たったひとりわたしに向けて唄ってくれないか。


わたしの元を去っていった恋人たち。

長い時を経ているのに、

なぜこんなにも憎く愛しいと思うのだろう。


愛なんてどこにもないじゃないか。

裏と表がせわしなく入れ替わる世界に、

愛なんてない。


ねえ、あの時の大人たち。

愛は本当にあったよね?

少し姿を消しているだけならば、

まだ信じていいよね?


わたしはずっと見つけられない。

わからないままだ。

大人になればわかるって

そう言っていたじゃないか。



わたしは、

わかりたくないのだ。


大人の世界に愛なんてなかった。


どこにもなかったよ。

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愛を語るな、大人たち せり @seriseri_kaku8

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