君を求めて
わをん
12×2
やっと、気持ちが軽くなったような気がした。今まで縛られていたものから解放され、新たな一歩を踏み出して。自分の生きたいように生きられるはずだった。
見慣れぬ駅で降りる。どこか今までと違うような香りがして。俺は意気揚々としつつももう社会人なんだから、と自分の中での大人の像を演じてみる。少し古びた駅の改札を出ると、嗅いだことのないにおいと共に意外にも静けさを保った町が入ってくる。
親の余計な心配のせいでこっちに着くのが遅れたが、何とか明日の仕事には間に合いそうだ。最近の郊外の開発で広くなった道に街灯が気持ち悪いほど延々と並んでいる。俺はこういう光景が嫌いだった。毎日同じように電車に乗りながらみんな同じような仕事をして。絶対にそうはならないと、そうはなるまいと努力を続けてきたつもりだった。でも、無駄に終わった。「他人と違うことを見つける」ことに執着したせいで友達もいないし、結局自分には何もないということを突き付けられただけだった。社会人になって二年、毎日こんなことを考えてしまう。会社ではミスをして、実家ではそれを隠すのに必死で。それに耐えきれず家を出た。新しい家に住むことで多少なりとも変わってほしいよ、俺。こんな人生なんて。と思うことも増えてきた。どこで間違ったのだろうと、探してみるが見つけられない。
そうこう考えているうちに、何度も下見をした家の前に着いていた。
この家に引っ越してきて数日、梱包もひと通り取れてひと段落。家、と言っても小さなマンションの隅なのだが、実家の部屋よりは大きいのでとりあえず満足だ。内見したときからこの部屋が好きだった。窓から見える広い田んぼと川。俺は昔から自然が好きで、よく山に登ったりもしていたなあ。なんて思い出す。ときどき漂ってくる、このにおいがすきだ。草と水の独特なものを風が運んでくる。たまに洗剤や料理のにおいなんかも流れてくる。決して嫌いではないが集中をそがれてしまったり、する。そうだ、この前隣人に挨拶に行ってきたのだけれど、気難しい人だというのが一目でわかった。隣なので家にいるかいないかなど、なんとなくでわかる。確実に家にいるというのに一回目の呼び鈴を鳴らしても出てこず、二回目も同じく、三回目にしてようやく面倒くさそうに出てきた。正直、手土産を渡したくなかったが仕方なく渡した。それも感謝もせずに。社会人として常識的なこともできないのか。とあきれてしまった。
-執筆途中につき-
君を求めて わをん @kaerukunn
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