(二)

 二〇二三年六月二八日水曜日正午頃。

 その後、汎人と秀美は、土砂の中の人間を掘り起こすのを断念して麓まで戻ると、村の駐在所に駆け込んだ。高蔵寺緑三郎という駐在さんがそこにおり、二人は高蔵寺氏の運転するコンパクトカータイプのパトカーで土砂崩れの現場まで戻ってきた。

 雨は弱くなり、霧雨になっており、傘がなければ服がすぐにしっとりと濡れてしまうような状況だった。

 無線で現場への到着を報告すると、駐在さんは車のトランクに積んでいたポンチョ式の雨合羽をその場でかぶって土砂のところまできた。


(続く)

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