(一)-4

「あ、ちょっと待って」

 汎人が秀美に言うと、秀美はブレーキを踏んだ。

 すると汎人は助手席のドアを勢いよく開けて外に出た。

 運転席で秀美が「あ、先生! 鬼龍院先生!」と呼び止めようとする声を無視して汎人は崖崩れの土砂に近づいていった。

 倒木や初夏に育った草木、砂利や大きな石、岩石などが入り交じっている粘土層の土の中から、汎人はおかしなものがそこに突き刺さっているのを見つけた。

 それは空に向かって伸びる何かであった。遠目で見たところ花のようなものが先端についており、空に向いていた。


(続く)

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