2.果ての際に建つ家

 少女の家は、町の外れの「世界の果て」の近くにぽつんと建っていた。


 家からほんの少し歩くだけで、そこで地面が途切れ、あとは青い空が果てしなく広がっている。


 少女はその家の近くでヴォルに振り返り、丁寧に頭を下げた。


「いやあ、本当にありがとうございます。荷物はもう、その辺に適当に置いていただいて構いませんので、ええ」


 ヴォルは少女の方を見ていなかった。吸い込まれるような青い空が広がるその風景に目をやったまま、言われたように、荷物をそこに下ろした。


 少女はさっそく、下ろされた袋を開け、中からガラクタにしか見えない鉄クズだの何だのをひとつずつ取り出しては検め、地面に置いていった。


 しかしやがて、ヴォルの様子に気付くと、いたずらっぽい笑みを浮かべながら彼の背中に近づいた。


「ほう、流れ者のアンタでも、この景色には心を奪われるものなんスか?」


 ヴォルは「空」に目をやったまま言った。


「まあ、な。『世界の果て』はこれまでも何度か見てきたから、珍しいってわけじゃあないんだが……」


 少女は「ふむ」と、返事なのか何なのか、よくわからない声をあげた。

 それから、少し改まった調子で言った。


「ところで何でも屋さん。良ければもうひとつ、仕事を頼みたいのですが」


「引き受けるかは内容によるが、手は開いている」


 ヴォルは「空」を見続けたままだったが、その声は今までとは違って、少し厳しいものになっていた。「お仕事モード」である。


「この世界の地下に、神々の遺跡が眠っているという話はご存知ですよね?」


「そりゃまあ、な。神々がこの世界を空に浮かせるための儀式を執り行うために造ったというやつだろ? 本当かどうか知らんが」


「そうそう。それそれ」


 そこで少女は咳払いをし、何度か「うん」とか「うー」とか言って喉の調子を確かめた。

 それから、言った。


「そこへの侵入のお手伝いをしませんか?」

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