スタートは新宿駅、ゴールは小田原駅

桃月兎

移動方法

俺は少しは名の知られた現役のアスリートだ。

テレビ局から出演依頼があったので快諾した。

収録日の前日に、テレビ局で概要を説明された。


スタートは新宿駅、ゴールは小田原駅。

五人が同時にスタートして、最初に小田原駅に着いた人物

が優勝。

移動方法はなんでも自由。

俺以外の参加者は、鉄道マニアの女性アイドル。九州の鉄道会社の元社長。料理研究家兼大学教授。自称魔法使い。


俺はアスリート代表だが、別に負けたとしても失う物は無い。専門分野じゃないんだから。


優勝賞金は50万円。

出演料とは別に競技中の交通費は電子マネーで一万円分支給。不足したら、収録後に補填。


要約すると、こんな感じだ。


参加するからには勝ちたいよな。

ルートは大きく分けて、4つだな。

1.タクシーのみを使う。

2.小田急線のみを使う。

3.JRのみを使う。

4.新幹線を使う。


自宅に戻り、スマフォで検索開始。

タクシーだと、およそ67分。

小田急線だと72分。

JRのみだと98分。

新幹線ありだと66分。


でもタクシーは無しだな、渋滞に左右されるから。

新幹線も無しだな、確実に乗れるとは限らないし。

此処は素直に小田急線を使おう。

後は新宿駅と小田原駅のホームを頭に入れよう。



番組収録当日。

新宿駅前の大きな歩道に来ている。

俺を含めた五人がスタートラインに並んだ。

12時丁度が競技開始となる。


クラウンチングスタイルで、見構えた。

競技開始合図と共にロケットスタートを決めて、他者を大きく引き離して、改札を通り抜けた。


ホームで電車を待っていると、番組のスタッフから渡されたスマフォが振動した。

電話に出た。

相手は番組のスタッフだった。

「終わりましたので、スタート地点に戻って来て下さい」

意味が分からない。聞き返す。

「収録が中止って事ですか?」

「違います、優勝者が決定しましたので、競技が終了です」



そんな馬鹿な、競技開始から2分と経ってないぞ。


意味不明過ぎる。






スタート地点に戻って、説明を受けた。

理解はしたが、納得はしていない。

自称魔法使いが瞬間移動したなんて。








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スタートは新宿駅、ゴールは小田原駅 桃月兎 @momotukiusagi

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