第4話 けーちゃん90才

「けーちゃん!来たよー!元気そうやなあ。」


「、、元気やいうても、足がこんなんやさかい。」


けーちゃんとの会話は何時も始まりは、

こんな感じで。


昨年から入った施設の

2ヶ月に1回程度の面会になっても変わらない。




親族で1番元気だったのが、島暮らしする

父方の叔母(享年93)で、

2番目が90のけーちゃん。


2人とも子供はいなくて、

90越えで1人暮らしをしていた。


90才の1人とは、

毎日どんな世界なのだろうと思う。


島で亡くなった叔母は、

几帳面にノートを書いていたから、

その毎日をノートから垣間見る事が出来た。


島の気心知れた人達に

囲まれ生きていた島の叔母と違い、

けーちゃんは足が悪い。


だから家から殆ど出ない世界を生きる。


けーちゃんのキーパーソンになってから、

そんな1人の暮らしが心配で、

母を在宅介護していた時でも

2ヶ月に1度は顔を出すようにしていた。


というのも、

母の姉さんになる『かずちゃん』は

やっぱり1人暮らしをしていて、

寒い冬に孤独死してしまったから。


発見まで1週間たっていた。


『かずちゃん』ところは、

出て行った息子が2人で、2人とも未だに独り。


真っ白い雪が吹雪く葬儀場で、

たった独りで座る息子が、


「きっと俺も孤独死やなあ。」と呟いたのが

妙に予言めいていて、


けーちゃんはそうならないようにと

キーパーソンになった時には、

顔を出しついでに

庭の草刈りと

処方されている薬を確認していた次第。


ところで

キーパーソンとは


要支援者や要介護者の介護において、

療養の方針を決めるに

影響力を持つ


家族、親族、後見人だ。


介護サービスの利用内容の選択に契約、

サービス開始後も定期申請や連絡決定といった

介護者の窓口を引き受けるから、

当たり前だが家族にキーパーソンを依頼する。


けれど

けーちゃんには家族がいない。

かつて『おにいちゃん』と呼んでいた

人物と住んでいたけれど、

30年前に亡くなって以来

けーちゃんは独りだ。


しかも、けーちゃんは生まれた時から

片足の長さが違うとかで、

足が悪い。


だから、母や次女叔母に何かと

お願いをしていたから、

子供の頃から知っている

けーちゃんの事を、

ずっと母方で1番年上の叔母さん

と思って生きてきた。


だって、祖父はいつも、けーちゃんの面倒を

見ていた記憶があるからだ。


赤ん坊だった頃に、

けーちゃんに抱っこされた写真は

沢山ある。


そんな

けーちゃんの事を不思議に思ったのは

小学校の夏休みの時。


祖父に攣れられ

祖父が、住んでいたという場所に

連れていかれた時だった。



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