ギア、スタート!
テリヤキサンド
ギアスタート!
「うーん、これどうしたらいいんだ?」
15歳になったばかりの少年は目の前にある透き通った板を見て、悩んでいる。
悩んでいる理由は15歳になった時に授けられるスキル。
スキルの中には当たり、ハズレがあり、それによってこれからの道が決まる。
そして、そのスキルが
ギア
ギアというスキルは聞いたことがない。
スキルを授けてくれた神官にも質問してみたものの、過去のスキルにも同じものはなく、教会がスキルについて調べてくれることになっている。
普通ならスキルを言葉で発する、意識することで発動させることができるのだが、うんともすんとも反応がない。
「まあ、とりあえず、冒険者登録だけでもしておくか。」
スキルに関係なく、冒険者になることを目指していたために技術はある。
冒険者ギルドへとつくと登録を済ませる。
その際にスキルを見られることになるのだが、発動自体できないことがわかると特に期待されることもなく最低ランクからのスタートとなった。
とくに誰かが絡んでくることもなく、薬草採取の依頼を受け、街の外へと出る。
採取の場所は街周辺の地図に群生地が記載してあったために迷わずにくることができた。
1人黙々と薬草を採取して、規定の量になったので帰ろうかとした時
「きゃああああ!」
少女の悲鳴が周囲に響き渡る。
少年はその声に無意識のまま反応し、駆け出す。
声が聞こえたのは薬草の群生地の近くにあった森。
悲鳴の聞こえた方向へと草の根をかき分けていくとそこには2人の傷ついた少女と
「な、なんでこんな場所にオークが!?」
初心者の出入りしている場所はスライムや単体で現れるゴブリンなど比較的に戦いやすい低ランクのモンスターが出現することはあるが、それよりも上位ランクのオークが出ることは滅多にない。
そんな棍棒持ちオークがその豚面をにやけさせながら、傷ついた少女達へと迫っている。
少女達の装備はまだ駆け出しの装備でオークの攻撃を受けたのか1人は気絶、もう1人は気絶した少女を庇いながら、オークに対し剣を突きつけている。
「こ、こないで!」
剣の間合いまでオークが近寄ってきたところで少女が剣を振り回すが、それをオークは片手で弾き飛ばす。
「あっ。」
剣がなくなり、もう何もできないと諦め、少女は膝をつく。
それを見て、オークはより一層笑みを深めながら、少女へと手を伸ばしていく。
「う、うわあああああ!」
少年は叫びながら、オークへと駆け出した。
完全に死角から入ったナイフのの突撃はオークの脇腹へと突き刺さる。
「ブ、ブモッ!」
突然の少年の乱入に驚きながらも脇腹に走る痛みにオークは怒り、攻撃対象を少年へと変え、腕を振るう。
「うおっ!」
間一髪、それを回避して距離をとるが、ナイフは突き刺さったままになり、丸腰になる。
どうにかして、ナイフを取り戻すことを考えなければならないがそれよりも
「あんた!さっさと逃げろ!」
「えっ!えっ!」
「俺が引きつけるからさっさと逃げてくれ!」
「わ、わかった。」
動揺しながらも少女は気絶した少女をなんとか抱えて、ゆっくりとだが動き出す。
その間、オークがそちらを追わないように地面に転がっている石をオークへと投げながら、少女達から離れるように移動していく。
「ブモオオオオオ!」
ちまちまと攻撃していく少年にイライラが募り、完全にキレたオークが棍棒を振り回しつつ、少年絵と迫る。
少年はなんとかその攻撃を避けていく。
攻撃が単調で助かったと思っていた時、
「ゴアアアア!」
オークは棍棒での攻撃でなく、その巨体を生かした体当たりをしてきた。
少年はそれを想定していなかった。
「ぐふっ。」
ギリギリで避けていたことで逃げ場がなくなり、体当たりを喰らってしまう。
それでも後ろに飛びつつ喰らったことで最悪な事態は回避したが、それでも立ち上がれないほどのダメージ。
オークは今の一撃で少年が動けないと確信したのかゆっくりと棍棒を振りつつ迫り来る。
自分に死が迫っている中、少年は色々なことを考えていた。
あの子達は逃げれた?
俺の犠牲は意味があった?
こいつは俺を殺した後、あの子達を追うのか?
それなら、俺に意味はあるのか?
何も成し得ていない俺の生に意味があったのか・・・。
何も成していないのに!!
このまま、終わるのは嫌だ!
その瞬間、カチッと何かが嚙み合うのがわかった。
ああ、ギアはこう使うのか。
それを理解した時、オークが棍棒を振り下ろしていた。
「ギアスタート。」
棍棒が少年の頭に直撃する瞬間、少年の腕がそれを受け止める。
「ブモッ!?」
受け止められた棍棒を引き剥がそうとするオークであったが、少年の手はびくともせずに動かない。
「ファーストギア!」
少年がそう叫んだ瞬間、少年の体から湯気が上がるほどの熱が上がる。
すると棍棒がだんだんとオークの方へと押されていく。
負けじとオークも押し返そうとするが、少年の方が力が強い。
「時間かけてるとまずいからな、セカンドギア!」
熱が一層上がり、棍棒を軽々と押すと態勢を崩したオークの腹に蹴りを入れる。
「グモッ!」
蹴りという威力でない一撃に腹を押さえつつ、後退するオークを横目に少年は先ほどのオークに弾かれた少女の剣のもとへと目にも止まらぬ動きで移動し、疲労とそのまま、オークへと走り出す。
それに対し、オークは棍棒で応戦するが、
「サードギア!」
棍棒が空振り、少年の姿はオークの目の前から消える。
どこにいったのかとオークがキョロキョロとしていると頭上に影が差す。
「うおおおおおお!」
今できる限界の力で飛び上がっていた少年は落下するとともに力一杯に剣を振り下ろす。
それに対し、棍棒を横にして防御したオークであったが、剣は棍棒を断ち、オーク本体へと至る。
そして、剣が地面につく頃にはオークは断末魔が響き、その巨体が後ろへと倒れていた。
それとともに、少年の体から上がっていた湯気も止まり、ギアの効果も切れ、少年は前のめりに倒れていった。
その後、無事にギルドまで辿り着いた少女達の通報により、少年は無事に帰還することができた。
・・・少年のスキル「ギア」が始動したことで世界に変化が起きることになるのだが、それはまだ少年は知ることはない。
ギア、スタート! テリヤキサンド @teriyaki02a
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