第3話 登校、しちゃいます。

「おはようございます、世界」


今日は月曜日。皆少し気落ちしたような顔をしているけれど、まぁ〜がんばるかぁ…っていう感じで頑張ろって思う、そんな節目の日。

そんな区切りの中でも、僕は他の人達に比べてより大きなモノにに立っていると言える。


「そしておはようございます。絶望」


転校初日の遅刻確定演出である。終わり。


「ああ、ヤヴァい…初日からはやばい…誰かとは言わないけど間違いなくブチ殺されるぅ…」


現在時刻は、朝の八時半。ちなみに、門限は四十五分。

ここから学校までは、電車で十五分。

今から言っても間に合うはずないです。対戦ありがとうございました。


一体どうしてこうなったのか…

…どうやら昨日の夜ゲームしまくってた音がうるさいってのと、その後に姉さんの『オイゴラ総太ァ!』デスボイスで、お隣さんを起こしてしまったらしく。

その後に電話で話していた声も聞かれていて、大家さんに連絡が入り。

ぐっすり快眠して準備を整え、意気揚々と玄関を出た僕は一時間半、その場でこってり絞られてしまったとさ。


…誰のせいとも言い難い。これが姉の怒声へのクレームだけだったら、次電話で話す時に思いっきりマウント取れる煽って差し上げるのに。

まぁ少なくとも今後気をつけるべきは、ゲームの音量と、話し声と、大家さんってことがわかっただけ儲けもんか。

学生生活は、試行錯誤を繰り返して成長していくもんだってとーさん言ってたし…


というか、そんなこと言ってる場合じゃない…刻一刻とタイムリミットが迫ってきてる。

あぁどーしよ…学校まで遠いのにもう確実に学校に間に合わない…

おまけに転校初日…先生や同級生からの印象は初っ端から地に落ちてしまう…いや正直転校生パワーの一端である、『すみません…道を間違えてしまって…』が使える以上、そこまで影響はないと思うけどでもなんか遅れてきたときこう…もやもやするのはいやだなぁ…


そ〜んなときには?


「《僕も一緒につれてってくれない》?ちょっと新しい学校まで。あ、道は指定するから。」


そう!魔法を使えばいいじゃない!!人目につかないところで。


と、言うわけで。こ〜んな時に役立つ、移動手段としては最適、しかも日常生活のちょっとしたことが楽〜になる、《風魔法》の使い方と、原理を解説していきましょ〜。


魔法は超常現象だけど…一応原理とか、仕組みとかが存在する。

まぁ、それぐらいは共通認識としてあるんじゃない?MANGA!ANIME!!とかでなんだかんだ理由付けが為されてることが多いよね、超能力とかって。

いや〜日本って流石だよね。


まぁ、そんなこんなで(こじつけはあるものの)魔法の使い方が何個もある中で、僕流のは結構簡単な部類。


「《皆集まって。学校の方へ行きたい人は、連れてってあげる。》」



…何いってんだって思うだろうけど、僕もよくわかんないんだよね。

そもそも魔法が使えたのが、物心付いたあと直ぐみたいな時だったから、何がきっかけで魔法が使えるようになったのかも分からないからしょうがない。

皆、自分が初めて歩いたときのことなんか覚えてないでしょ?そんな感じ。

ある意味魔法は、僕にとって日常と同然なのだ。


閑話休題。


事象とお友達になるってことなんだけど…別に物事に意志は宿ってないんだよ。

そりゃ付喪神とか、いるだろって思うだろうけど…う〜ん説明が難しい。


…あ、ダムとかなら分かりやすいんじゃない?

ダムって、大量の水をせき止めてるよね。川の水が溢れて、近くへの被害が出ないように。

でもそれって、ダムっていう存在っていうのは、水たちにとってはなんだよ。こっちに流れたいって。法則に従いたいって。水自体はそう思ってないけど。そうしたいのに、何かが邪魔でうまくいかない。


だから、僕がそのダムをぶっ壊してやるんだよ。…たとえだよたとえ。

そしたら、水は自分の行きたいように流れる。

その流れる力のおこぼれをもらって、僕は優雅に川下り!

僕も水も、やりたいことが出来てウィンウィン!


…そんな感じ?かな。あやふやだけど、許してね。


かいせつおわり。


水を具体例に出したけど、今回の《風魔法》の場合は…


「《とりあえず足に集まって》」


を足にまとわせて、離陸準備。

都会だとこういう交渉が少なくて、少し便利だ。

皮肉だけど。


そして…


「《大!じゃーんぷ!!!》」


風をバネにして、地面を蹴り、自分ごと空高く発射ァ!!

そのまま、学校までのを突っ切る!!


ほら、この通り!徒歩五分はかかる駅にも、なんと十秒ほどで、到着。急いで電車に向かっている人を上空から見下ろしながら、すいすい〜と登校できちゃうんですよ〜。


あ、飛んでるわけじゃないから、たまにビルの屋上に着地して飛距離を稼ぎましょう。そうじゃないと、だ〜れも得しないラ◯ュタが始まっちゃうから気をつけよう。


ビルからビルを飛び移って、気分はまるで映画のヒーロー。

応用すれば、壁走りや壁張り付きだって(練習次第では)可能!


そして何と言ってもこの速さ!

なんてことでしょう!絶対に間に合わないと思っていた登校が、なんと門が閉まる五分前までに、たどり着いてしまったではありませんか!

電車でも十五分かかるこの距離を、なんと十分で!荷物も崩れず、服も汚れていません!


どうです〜?《風魔法》!ものすごく便利ですよね〜!


………


まぁ。便利でも、使えなきゃ意味ないんだよねぇ〜。

さっきも言ったけど、なんで使えてるのか自分でも分かってないんだから、販促以前の問題だね。あはは。


「《風よ。ありがとう。また、どこかで出会えるとイイね。》」


協力してもらった風は、目的が終わったらしっかり自然に返してあげましょう。


テレビショッピングパート終わり。


というわけで。遅刻しそうになったけど、ギリ間に合って、新しい学校に着きました。


ちょっとわくわく。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕は魔法が使えます。 COOLKID @kanadeoshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ