俺の脳内選択肢がヒロインだったはずの幼馴染ではなく、義妹ばかり優先するんだが
甲賀流
第1話 義妹の着替え中に鉢合わせるのは不可抗力だ
「好きです! 俺と付き合ってください! 」
「え……ええっ!? 」
「ふぇぇっ!?」
俺が告白した先には2人の女性がいる。
もちろん2人に向けて告白したわけではない。
「あ、あんた、幼馴染の
一頻り怒鳴った後、義妹は足を猛回転させながら校門をくぐり、帰っていった。
「ええっとぉ……なんか邪魔しちゃったかな? というか
幼馴染である寧々は、微笑んでくれている。
しかしそれは涙を浮かべながらだ。
こんな状況に居た堪れなくなったのか、背を向け、彼女も校門へ走っていった。
はぁ……。
俺は何をやっているんだ。
誰が好きでこんなことをするよ。
ちなみにこんなことというのは、説明するまでもないが、今となっては家でも学校でも口を開かないどころか目すら合わせない義妹の瑠奈と、物心ついた時から常に一緒にいて、高校になった今でも朝起こしに来てくれるような今考えると有り得ないほどの幼馴染属性を持つ寧々、この2人を同時に呼び出し、何の罰か義妹に向かって愛を叫ぶといった愚行のことだ。
敢えてもう一度言おう。
こんな愚行、誰が好きでするよ。
ならなぜこんなことをしたかって?
1. 幼馴染の寧々の前で義妹の瑠奈へ愛を叫ぶ
2. 自ら命を絶つ
見たら分かるだろ?
こんな選択肢出てきたら皆そうするって。
あ、見ても分からないか、これは昨日突如俺の脳内から具現化した選択肢なのだから。
つまるところ俺にしか見えないらしい。
こんな選択肢無視したらいいじゃん。
そう思うだろ?
俺だって昨日はそうしたさ。
でもこれを聞いたら誰も無視できねーぜ?
◇
「……ん、ちょっと、寝すぎたか、今何時だ 」
気づけば時計は夜の7時を示していた。
「あれ、変な文字が視えて……る? 」
目を擦れどその文字が消えることはない。
1. 腹筋100回する
2. 階段から落ちる
こんな文面が視界の上半分に映っている。
まるでゲームの選択肢のようで、しかも視線を向けるとカーソルまで出てくる始末。
「いや、どっちも嫌だわ 」
と、俺は無視をして再び寝始めたのだった。
「……んあぁ、また寝ちまったぁ……ここどこ……ってなんで目の前に階段が!? 」
たしか俺は2階の自室で寝ていたはず。
寝ぼけてここまで移動したことなんて生きてきた17年間一度もなかったことだ。
「うおおっとぉぉ!!」
ドンドンドンドンドンッ───
「……痛えよぉ、って何だ、また視界が…… 」
Quest Failed!!
真っ赤な画面でそう表示されている。
目の前が真っ赤なんて何か病気だろうかと思ったが、それもすぐ収まった。
「俺、病気にでもなったかなぁ」
「ちょっと
「あー何でもないですよーっと」
母親にそう適当な返事をして、リビングへ向かった。
◇
今思い出してもゾッとする。
でもこれだけじゃねーんだ。
あれはあの後すぐのことだ。
俺は再び2階へ向かおうとしたんだが、異変はその時起こった。
またあの選択肢が俺の行く末を邪魔してきた。
1. 義妹の着替え中に鉢合わせる
(あなたは洗面所のドアを開けるだけです)
2. 母親の服を脱がす
何だこの選択肢、なんてラブコメ?
1はもちろん論外だが、2なんてものは論外の論外である。
しかも1の選択肢なんて()の後書きで気軽にできますよーみたいなことをアピールしてきやがる。
仕方ない、不可抗力だ。
これで母親の体裁も守られるといったもんだ。
俺はあくまで洗面所に歯ブラシを取りに行くだけなんだ、こんなこと日常の1つであって、決して義妹がお着替え中なんてことは知る由もない。
人間は所詮人間であって予知能力なんてもん使えるはずもなく、今から俺が行うことはなんの罪もないのだ。
ガチャッ───
「ちょっ……あんた!壁に入浴中の札かけてあるでしょ!!」
ドスッ───
バタンッ───
頬を赤らめた下着姿の義妹にみぞおちを殴られ、洗面所から追い出された俺の視界は状況とは反対にQuest Clearと賑やかな画面で覆われていた。
間違いない。この選択肢、ガチだ。
◇
ということで寧々を呼び出し、目の前で瑠奈に告白をしなければ、自ら命を絶たなければいけない状況となっていたというわけだ。
ただ瑠奈に罵倒され、寧々に悲しい想いをさせてしまったことを考えると自害した方がよかった可能性はある。
グダグダ考えているうちに自宅へ着いたようだ。
ガチャッ───
「ただいまぁ……って瑠奈、帰ってたのか 」
「……あれ、なに? 」
妹の目が冷めきっている。
あれは人を見る目じゃない。
義兄をなんだと思っているんだ、この義妹は。
義兄だと言ってもこの数年、ほとんど会話すらしていない。
たまに罵声を浴びせてくるか、冷たい目を向けてくるかこの程度のコミュニケーションだ。
「ああ、気にすんな 」
「気にすんなってそんなの……いや、何でもない」
さすがに冷めきった義妹も愛の告白には戸惑っているようだな。
瑠奈はあんな感じだが、今日は今のところ選択肢も出てないし、いつも通り過ごしてやる。
◇
「……あれ、もう朝か? 今日誰にも起こされなかったな……って何だこの時間!? 遅刻じゃないか! 」
ヤバいヤバい。
まだこの時間走ったらまだ間に合うぞ!
って遅刻しそうなんていつ以来だ。
いつもは……そうだ、寧々が起こしてくれて、着替え終わった俺を無理やり引っ張って連れてってくれてたんだっけ。
1人で登校するなんていつぶりだろう。
なんて思っていたらなんとか学校に到着した。
教室まで入ったが、HRもまだ始まってないようだ。
「よっ! 親友! 」
「朝から近ぇって
こいつは中学からの腐れ縁。
学校帰りや休みの日に遊んだりする唯一『友達』と呼べる存在だ。
「お前珍しく
「んなこたねぇよ、今声かけるとこだって! 寧々!今日の朝だけど……」
ガタッ───
俺の声に反応するかのように寧々は机から立ち上がり、友人の元へ向かっていった。
その顔はバツの悪そうな、そして気まずそうな顔をしている。
その別れたての元カノみたいな表情よしてくれ。
まぁ彼女できたことないから知らないが。
「……避けられてんじゃん 」
そう言ってまたこいつは肩を組んできた。
「だから近ぇって 」
授業が始まったが、寧々にあんな顔されるのは初めてだ。
そりゃ義妹に告白する幼馴染ってヤベぇよなぁ。
それもわざわざ自分を呼び出して、なんて逆の立場なら訳が分からない。
このまま寧々と仲違いし続けるなんて考えたくないな。
ここで改めて思うのも変だが、俺は昔から寧々に片想いしている。
こんなに一緒にいすぎて、告白するタイミングがない……いや、これはただの言い訳であって本当はこの関係を壊すのが怖いのだ。
初めて距離を置かれて、寧々を失うのが怖くなった。
よし、授業が終わったら謝ろう。
キーンコーンカーンコーン───
「よし、授業終わった。寧々!一緒に……ってもういない 」
「おい颯真よ、寧々ちゃんならほれ!そこ!」
陽斗が指差すのは校庭だ。
友達と帰宅しようとしている。
「助かったぜ!親友!」
「おうよ!」
俺は急いで彼女の元へ向かった。
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最新作のご愛読ありがとうございます🥺
金土日と3話完結の短編として執筆致しました。
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